【9月15日 東方新報】中国では長年、子どもたちの「宿題漬け」が社会問題になっている。宿題にかける時間は世界一で、睡眠不足や体調不良などの問題が起きている。政府も是正を呼び掛けているが、大きく改善する気配はない。過酷な受験戦争が最大の要因だが、「日本は、学習指導内容と授業時間を3割削減する『ゆとり教育』を取り入れて失敗した」という認識も少なからず影響を与えている。

【関連記事】名門校校長:「早期英才教育」は子供の時間の浪費にすぎない

 中国の民間機関による「小中高校生の宿題ストレスリポート」によると、2017年に18歳以下の中国の子どもが宿題にかけた時間は1日平均2.82時間で、世界平均の3倍、日本の3.7倍、韓国の4.8倍となった。2015年の3.03時間、2016年の2.95時間に比べると短縮傾向だが、依然として世界トップだ。

 李克強(Li Keqiang)首相が全国人民代表大会で発表する年間施政方針「政府活動報告」でも、学習負担の問題を取り上げている。教育省は「小学1~3年生には宿題を課さない、4~6年生は1日1時間以内」などの基準を定めているが、多くの家庭はそれを上回っている。

 中国では毎年6月、日本の大学入試センター試験に当たる「高考(Gaokao)」が行われる。高考の点数で大学の合否が決まり、将来の就職にも大きく影響する「人生をかけた一発勝負」だ。各校は合格率を上げるため、生徒に大量の宿題を与えている。

 保護者の教育熱も高い。中国は2015年まで続いた「一人っ子政策」のため、ほとんどの家庭が一人っ子。両親とそれぞれの祖父母は、唯一の子ども(孫)に良い学校、良い会社に入ってもらうため、問題があると思っても「勉強しないでいい」とは言い難い。

 こうして、政府が「子どもの負担軽減を」と声を上げても、学校や家庭にはなかなか届かない。

 さらにここ数年は、ゆとり教育に関する考察も目立つ。

 中国のIT大手「網易(NetEase)」は「日本のゆとり教育は三つの結果をもたらした」と分析。▼ゆとり教育を取り入れなかった「私立学校の台頭」 ▼社会の競争はなくならず、塾に通わせるため家庭の支出が増えた ▼ゆとり世代は学力が低下し、大人になっても競争力が低い――を挙げている。そして「日本は既にゆとり教育から方向転換している。中国の子どもたちの負担を減らすことが本当に正しいのか、日本と同じ轍(てつ)を踏まないよう、よく討論する必要がある」と結んでいる。

 中国の子どもたちが「宿題の海」の中でおぼれないよう必死にもがく姿は、当分変わらないようだ。(c)東方新報/AFPBB News