【8月29日 AFP】米インターネット通販大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)は28日、同社傘下のドアホンメーカー「リング(Ring)」が開発したアプリのネットワークに、米国内の警察署400か所以上が参加したと発表した。ドアホンの録画映像を利用した犯罪防止対策には、市民の自由が脅かされるとの懸念が高まっている。

 このような米IT大手と警察の提携はまれで、一部地域では犯罪対策の一環として、住民にリング製品のディスカウントや無料提供が行われている。

 アマゾンが8億3900万ドル(約890億円)で買収したリングによると、映像を録画するスマートドアホンと、これに連結されたアプリ「ネイバーズ(Neighbors)」を使って、住民と地元警察間の情報共有を向上させることができるという。

 リングのジェイミー・シミノフ(Jamie Siminoff)最高経営責任者(CEO)は同社サイトで、「現在、405の警察署が『ネイバーズ』ポータルを利用している。これは『ネイバーズ』アプリを拡張させたもので、警察が地域社会と協働することができる」と発表した。

 この『ネイバーズ』ポータルでは、地域社会での犯罪や安全性に関わる出来事についての重要な情報が投稿され、承認済みの警察官が閲覧、コメントすることができる。また、警察は録画された映像の提出を申請することで、進行中の捜査の手掛かりを求めることができるという。

 シミノフ氏は続けて、「地元住民と警察は『ネイバーズ』アプリを通じて協力し、盗まれた銃を回収したり、家族が子どもの安全を確保するのを助けたりするなど、素晴らしい結果を出している。盗まれた糖尿病の子ども向けの医療用品を取り戻したこともある」と述べた。

 しかし、リング製品の録画映像を警察が利用することをめぐっては、映像やその他のデータの収集、保管方法の安全規制がないままに、警察による監視が拡大するのではないかとの懸念が生じている。

 これに対してアマゾンは、利用者が同意した場合と映像を公的に投稿した場合のみ、映像は共有されると述べ、警察が住民に映像提供を要請する際にはリング内の担当チームを通じて申請しなければならないと説明した。

 また、リングの利用者は警察の要請を拒否することもでき、警察には要請を受け入れた利用者と拒否した利用者が分からないようになっているという。(c)AFP