【8月21日 AFP】耳の聞こえない韓国のテニス選手、イ・ダクヒ(Duck-hee Lee)が19日、ウィンストンセーラム・オープン(Winston-Salem Open 2019)の男子シングルス1回戦で勝利し、聴覚障害の選手としては初となるATPツアー本戦での白星を挙げた。

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 イ・ダクヒはヘンリ・ラークソネン(Henri Laaksonen、スイス)との1回戦で、雨による長時間の中断にも集中力を切らさずに7-6(7-4)、6-1のストレートで勝利。自らの存在をアピールした。

 イ・ダクヒは試合後、「障害のことはよくからかわれたし、テニスなんてやめた方がいいと言われた」「もちろん難しかったけど、友人や家族の助けもあって乗り越えることができた」「みんなに自分の力を示したかった」とコメントした。

「耳の不自由な人たちに言いたいのは、諦めるなということ。努力すればなんだってできる」

 障害によって不利な部分があるのは本人も認める通りで、イン・アウトの判定や審判の得点経過のコールは聞こえないため、ジェスチャーに頼って判断するしかなく、この日の試合後の会見では、婚約者が本人と通訳との仲立ちを務めた。

 イ・ダクヒにとっては、長い一日の末に訪れた勝利だった。勝利まであと2ポイントというところで会場は雷雨に見舞われ、両選手がコートへ戻ったのはおよそ5時間後だった。その後、素早く勝利を決めると、想定外の展開について「とにかく全力を尽くして、集中を切らさないようにと思っていた中で、勝つことができた」とコメントした。

 イ・ダクヒは世界ランキング212位の21歳。若くしてプロに転向した後は、下部ツアーのチャレンジャー大会を主戦場とし、世界ランキングは2017年に記録した130位が自己最高となっている。しかし今年は、6月のリトルロック・オープン(Baptist Health Little Rock Open 2019)でおよそ3年ぶりに下部ツアー大会の決勝に進出していた。

 イ・ダクヒは20日に行われた2回戦で、大会第3シードのホベルト・ホルカシュ(Hubert Hurkacz、ポーランド)に6-4、0-6、3-6で敗れ、大会から姿を消している。(c)AFP