【8月20日 AFP】中米エルサルバドルの控訴裁は19日、レイプ被害によって妊娠した子どもを死産し、反中絶法により禁錮30年の判決を受けた女性に、逆転無罪を言い渡した。女性は一審判決に従い、すでに33か月間刑に服していた。人権団体らからは画期的な判決として注目されている。

 首都サンサルバドル北東部シウダデルガド(Ciudad Delgado)地区にある裁判所は、エベリン・エルナンデス(Evelyn Hernandez)さん(21)に対する禁錮30年の一審判決を覆し、無罪とした。

 2016年4月、当時18歳で妊娠8か月だったエルナンデスさんは、同国中部クスカトラン(Cuscatlan)県にある自宅のトイレで子どもを出産した。

 エルナンデスさんは死産だったと主張し、出産するまで妊娠に気付いておらず、腹痛を覚えた後に出産に至ったと述べたが、検察当局はエルナンデスさんが出産前ケアを受けることを怠ったとして有罪を主張。同県コフテペケ(Cojutepeque)市の裁判所は翌17年、エルナンデスさんに対し殺人罪で禁錮30年の判決を言い渡した。

 エルナンデスさんの妊娠はレイプ被害を受けた結果だったが、家族が脅迫されていたために恐怖を感じ、警察には被害届を出していなかった。

 弁護団は、一審では子どもが子宮内で窒息死していたことを示す重要な法医学的証拠が見逃されていたとして控訴した。約1か月に及んだ控訴審は16日、検察側が禁錮40年を求刑し結審したが、判決は逆転無罪となった。検察側に与えられている控訴期間は10日間。

 エルサルバドルの反中絶法による禁錮刑は2~8年とされているが、裁判所はさらに重罪である加重殺人で有罪とする場合が多い。この場合、最長50年の禁錮刑が科され得る。

 今年3月には、流産したことで加重殺人で有罪となり、禁錮30年の刑を科され収監されていた女性3人が釈放されたが、同様の罪で約20人の女性が今も刑に服している。

 米州人権委員会(Inter-American Commission on Human RightsIACHR)は今年1月に公表した報告でエルサルバドル政府に対し、中絶したことによって女性を実刑に処する判決について見直すよう求めている。(c)AFP