【8月16日 AFP】サーファーと初期人類ネアンデルタール(Neanderthal)人の共通点は何だろうか。寒冷地で水上スポーツをする人に多くみられる、外耳道の骨が増殖する疾患「サーファーズイヤー(外耳道外骨腫)」だ。14日に発表された最新の研究論文で、現生人類の近縁種で約4万年前に絶滅したネアンデルタール人もサーファーズイヤーを高頻度で発症していたことが明らかになった。

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 だが、ネアンデルタール人が完璧な波を追い求めるサーファーだったわけではない。今回の研究結果は、ネアンデルタール人が、考古学的記録が示唆するよりもはるかに高い頻度で魚を取っていたことを意味する可能性があると、科学者らは指摘している。

 論文の筆頭執筆者で、米セントルイス・ワシントン大学(Washington University in St. Louis)のエリック・トリンカウス(Erik Trinkaus)氏と仏ボルドー大学(University of Bordeaux)の2人の共同研究者は、欧州や西アジアで発見されたネアンデルタール人や初期現生人類ホモ・サピエンス(Homo sapiens)など古代人類の化石77点の保存状態の良い外耳道を詳しく調べた。

 この結果、初期の現生人類の骨増殖の発生頻度は現代人とほぼ同水準だったが、10万年~4万年前のネアンデルタール人の化石23点については約半数に骨増殖がみられた。

 サーファーズイヤーは自覚症状がない場合が多いが、耳あか栓塞の発症と感染症や進行性難聴につながる可能性もある。

 骨増殖に関しては、フランスの古生物学者マルスラン・ブール(Marcellin Boule)氏が1911年、ネアンデルタール人の骨格に関するモノグラフの中で最初に指摘したが、これまで体系的な研究はされていなかった。

 今回の研究成果は、散在していたネアンデルタール人の水産資源利用に関する過去の観察結果に基づいている。かつて沿岸に位置していた遺跡の多くが現在は海中にあるため、魚の骨という考古学的証拠は入手が困難になっていると、論文の執筆者らは説明している。

 論文は、米オンライン科学誌「プロスワン(PLOS ONE)」で発表された。(c)AFP/Issam AHMED