【8月21日 東方新報】中国国産のC919型旅客機の開発が進んでいる。テスト飛行を繰り返し、順調に行けば2021年に航空会社へ販売する。中国政府はこれまで、対米国の貿易黒字が膨れ上がり、米国の反発をかわすため米ボーイング(Boeing)の旅客機を「爆買い」してきた。しかし、米国が中国に経済戦争を仕掛けている現在、米国に配慮する必要もなくなった欧州のエアバス(Airbus)、ボーイングの二大支配が続く旅客機業界に中国商用飛行機(COMAC)が食い込み、「ABC競争時代」が本格化するのは目前だ。

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 中国政府と上海市などが共同出資する国有企業・中国商用飛機は、C919のテスト飛行を続けている。「C」はChina、「9(Jiu)」は中国語で「久」と同じ発音のため「永久」を意味し、「19」は最大190人乗りを示しているという。一般的には中型ジェット旅客機にあたるが、中国では「大型旅客機」と呼んでいる。航続距離は5500キロで、中国の国内線や近距離の国際線に適している。

 2017年に1号機がテスト飛行を始め、今月1日には4号機が上海浦東国際空港(Shanghai Pudong International Airport)から離陸し、約1時間半の試験飛行に成功。2021年までに安全性を証明する「型式証明」を取得し、国内で就航する予定だ。既に今年3月時点で航空会社28社から815機の受注を得ているという。

 中国の航空会社は長年、ボーイングやエアバスの旅客機を利用してきた。直接的には国産技術が途上にあったためだが、対米国、対西欧諸国の貿易黒字を減らすため、政府の方針で旅客機を「爆買い」してきた面がある。しかも黒字減らしだけでなく、欧米諸国が中国の政治体制や人権問題に介入してくるのを「チャイナマネー」で封じ込める役割も含んでいた。

 近年は国産空母の建造、国産人工衛星の打ち上げなど、「中国の悲願」「夢」と言われ続けてきた分野で夢を「実現」してきた中国。同様に旅客機でも夢をかなえようとしている。米中間では経済戦争が続き、中国が一定の譲歩を見せても ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領が「それでは足りない」とばかりにさらに譲歩を求めている。ボーイング旅客機の「爆買い」で矛先をかわせる状況にはなく、外交面の配慮も必要がなくなってきた。

 中国は早ければ2022年から2024年の間に、世界最大の民用航空市場になるとみられている。中国の航空会社には国や地方政府の資本が入っており、C919が商用化すれば、「国策」で国産機を優先購入することになるだろう。何よりC919の価格は、同規模のエアバスA320、ボーイング737より大幅に安い5000万ドル(約53億円)といわれる。市場の論理としても、C919が中国市場で一気にシェアを伸ばす可能性は高い。運航が順調に進み、海外でも型式証明が取得できれば、中国と近隣諸国との国際線や、輸出により他国の運航路線に採用される道も開けている。

 中国の技術的台頭はC919だけではない。中国の民間企業「江西冠一通用飛機(Guanyi Aviation)」が知的財産権を持つ汎用航空機GA20は今月7日、浙江省(Zhejiang)横店飛行場でテスト飛行を行い、上空3000メートルの飛行に成功した。今年3月の初の公開テスト飛行から安定性、操縦性などを順調に確認している。4人乗りで時速265キロ、最大航続距離1200キロで、プライベートフライトや観光旅行など幅広い利用を想定している。

 同社の朱頌華(Zhu Songhua)董事長は「中国が自主開発した航空機を全世界で販売し、中国の優れた技術を広めたい」と意気込み十分だ。メード・イン・チャイナの航空機が世界に羽ばたこうとしている。(c)東方新報/AFPBB News