【8月5日 AFP】フィリピン政府は、共産主義武装組織の元構成員らを、海外へのショッピング旅行に招待した。同国軍が5日、発表した。長きにわたるこの反政府運動の終結を目指す取り組みの一環で、費用は全額国が負担したという。

 ロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領は先週、「新人民軍(NPA)」の元構成員88人を、4日間の香港旅行に招待。参加者の大半が女性だった。

 ドゥテルテ大統領は同組織の構成員らに対し、住居や経済、雇用面での援助を約束して、武器を捨てるよう呼び掛けてきた。今回については、その見返りが海外旅行だった。

 政府は2年前には、NPAの構成員らが和平交渉に関心を示さないとして、公式な対話を一時中止していたが、今回改めて斬新な戦略に乗り出した。

 軍が公表した写真には、4人以外すべて女性の元構成員らが、香港の高層ビル群の前で、土産袋を手に笑顔で写っている。

 軍報道官はAFPの取材に対し、元構成員らは支給された「相当な額の小遣い」を使って、香港の史跡やショッピングセンターを訪れたと明かし、「(構成員らが)人生について異なる視点を持つことは、治療の一部になる」との見方を示した。

 公式統計によると、NPAによる闘争の死者は最大で4万人に上るとされる。ドゥテルテ大統領は、元構成員らに海外ショッピング旅行を提供する一方で、軍に対してはNPAの「掃討」命令を出している。

 4000人から成るNPAは、同国で最多の犠牲者を出している武装組織の一つで、地方部の貧困層から大勢の構成員を集めている。

 同報道官によると、今回香港旅行に行った元構成員らは、半世紀にわたる共産主義に基づく反政府運動を支えるため、主にドゥテルテ大統領の出身地であるダバオ(Davao)周辺の貧しい村からNPAに加わった人が多いという。(c)AFP