【8月11日 AFP】国内総生産(GDP)よりも「国民総幸福量(Gross National Happiness、GNH)」を優先することで知られているブータンは、持続可能な開発の優等生とされてきた。

 ブータンは、二酸化炭素(CO2)の吸収量が排出量を上回る国としても知られている。だが現在、自動車ブームに沸いており、世界でもまれなこの立場のみならず、交通渋滞が国民の幸福度に影響を与える可能性も出てきた。

 交通当局責任者ペンバ・ワンチュク(Pemba Wangchuk)氏によると、過去20年で車、バス、トラックの数は5倍以上に増えており、首都ティンプーが最も影響を受けている。

 世界銀行(World Bank)によると、ブータンの経済は過去10年間、毎年7.5%成長してきた。総人口75万人のブータンで、自動車の保有率は7人に1台に達していると当局は推定している。

 交通渋滞は、ブータンが直面している広範な経済変化の影響の一つだ。国民総幸福量で知られる同国は、観光客には穏やかで素朴なイメージを持たれているが、国内では不満を持つ人も出てきている。

 世界銀行の昨年の報告書によると、地方から都会への流入の増加で若者の失業率が高まり、それが都市部の資源を圧迫している。また、国民の幸福を優先する国との評判にもかかわらず、国連(UN)が発表した「世界幸福度報告書(World Happiness Report)」2019年版では、ブータンは156か国中95位にとどまっている。

 インターネットやスマートフォンの普及が欲望をあおり、自動車販売業者らは日本や韓国ブランドの新車をショールームに並べて客を誘い込む。自動車税が引き上げられ、自動車ローンに対する規制も強化されたが、国民の自動車購入意欲は衰えていない。

 国内の金融機関が貸し出した自動車ローンの総額は、2015年は32億ヌルタム(約50億円)だったが、昨年は67億ヌルタム(約103億円)に達している。地元の実業家にとっては素晴らしいといえる数字だが、ブータンを世界で最も環境に優しい国の一つにとどめておきたい環境保護主義者らはこの数字に懸念を抱いている。