【7月30日 東方新報】中国政府系シンクタンクの中国社会科学院日本研究所(Institute of Japanese StudiesCASS)は23日、日本の政治・経済状況を分析した2019年版「日本青書」を発表した。昨年から関係が改善された中日関係が今年も持続することが可能と強調する一方、安倍晋三(Shinzo Abe)首相の改憲方針に警戒感を示した。

 青書では、中日関係について「2018年は中日平和友好条約締結40周年を契機に、全体的に改善基調を示した」と指摘。国務院の李克強(Li Keqiang)首相の訪日と安倍首相の訪中が実現し、「8年にも及んだ不安定で、悪化した関係は正常な発展の軌道に戻った」と歓迎した。また、日本政府がシルクロード経済圏構想「一帯一路(Belt and Road)」への具体的な協力方法について中国側と話し合いを始め、保護貿易主義に反対し、多角的自由貿易を堅持することで両国が共鳴したことを挙げた。

 その上で、2019年の中日関係が「一層、発展するチャンスを前にしている」としつつ、「安定的に前進するには、困難な取り組みも数多くある」と課題もあるとした。

 日本国内の政治情勢では「(4月30日の)天皇陛下の生前退位で平成時代に幕が下り、日本が新たな時代に向かおうとしている」と強調。安倍首相は自民党内で「一強」の地位を維持し、政党政治でも少数野党が林立する「一強多弱」の構造が続いているが、「安倍首相が目指す改憲への道は平たんではない」と分析した。楊伯江所長は「安倍首相が改憲に固執するなら、中日関係の安定した発展を妨げる」と述べた。習近平(Xi Jinping)国家主席は来春、国賓として訪日する予定だが、改憲論議が進めば、両国関係に悪影響を及ぼす可能性がある。

 青書の名は、英国議会の外交委員会報告書の表紙が青色だったことにちなんでいる。中国社会科学院は「日本発展報告」の題名で日本研究の成果をまとめてきたが、2009年から「青書」に変更した。日本の学識者やマスコミと交流のある知日派の学者が執筆しており、内容は中日関係の安定を求め、そのために「克服する課題が何か」という視点で書かれていることが多い。

 青書は同時に中国政府の方針も反映しており、2016年版では、安倍政権が集団的自衛権行使を容認した安全保障関連法を成立させたことに「日本の安全保障戦略が変質している」と懸念を示した。2017年版でも「平和憲法の改正は単純な内政問題ではない。侵略の歴史を反省し、中国や韓国の了解を求めるべきだ」と求めている。

 今年の青書も、安倍政権の改憲路線に警戒感を示したが、中日関係が多方面の分野で協力する必要性を強調している。中国と米国との貿易摩擦が続き、解決のゴールが見えない中、日本との関係を安定させたい意向がうかがえる。(c)東方新報/AFPBB News