2017年に鈴鹿サーキットで行われたウラカン・ペルフォルマンテの試乗会も、コースにいくつもの川ができるほどのドシャ降りに見舞われた。あれから2年、今回こそは好天を信じて向かった先は富士スピードウェイ。その目的は、昨年末にその名のとおり進化を遂げた新しいランボルギーニの末っ子、ウラカン・エヴォに試乗するためだ。ところが今回も、空は灰色の低い雲に覆われている。嗚呼、やっぱり日頃の行いが相当悪いのか。それとも空の彼方から下界を窺っているフェルッチオ・ランボルギーニに嫌われているのか……。理由はさておき、今にも降り出しそうな空の下、スラロームと定常円旋回からプログラムはスタートした。
サーキット走行に加えてこの2つのプログラムを組み込んでいる理由は、後輪操舵とトルク・ベクタリング、そして、それらを含めクルマの動的な挙動を統合制御するLDVI=ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータという、エヴォからウラカンにも搭載されるようになった新しい機能を体感するためだ。
外から見ても逆位相であることがわかるほど後輪に舵角が当たっているおかげで、一般的なスーパースポーツではとてもクリアできないような狭い間隔のパイロンを軽々とこなしていく。逆位相に切れるので本来なら内輪差が減ってパイロンに当たり難くなるはずなのに、内側のパイロンにタッチする人が続出。ドライバーが意図している以上に小回りしている証だ。ちなみに、低速のパイロンスラロームではスパイダーに乗ったが、従来モデル同様、新型も天井を見上げない限りクーペと区別しにくいほど、相変わらず高いボディ剛性を有していることが確認できた。
スラローム以上に目から鱗だったのが定常円旋回。姿勢安定制御をオンにし、ステアリングを切った状態でアクセレレーターを蹴り飛ばすように全開にする。普通なら前輪が堪えきれずに大アンダーステアになるか、後輪がパワーに負けて大オーバーステアでそのままスピン・モードになるだろう。しかし、もちろん速度が上がって行けば、外へ外へと膨らんでいくものの、エヴォは後輪操舵とトルク・ベクタリングを駆使して、弱アンダーステアを保ち続けるのだ。今度はスロットルを急に閉じてそのタイミングでステアリングを切り足してみる。これまた普通なら大オーバーステアからの派手なスピン間違いなしの状況だ。ところがである。さすがにここでは後輪が堪えかねてスッと流れ出すものの、カウンター・ステアを当てなきゃとステアリングを戻し始めたころにはすでに弱アンダーステアの姿勢へと戻っている。恐るべし最新技術。と思う一方で、操っている感じが薄れてしまったら折角のスーパースポーツがこれでは楽しさ半減なのではと、この時は思った。
肩慣らしが終わり、いよいよこれからが本番と思った頃には空から雨粒がポツリポツリ。私の順番が回ってくるころには路面はしっとりと濡れた状態になってしまった。「またか」と思ったが、嘆いていても仕方ないので、順番を待ちエヴォに乗り込む。先導車付きの走行は雨とそれにともなうコース状況の悪化により全開走行は叶わなかったものの、ところどころでクルマの挙動を試してみる。
限界が上がっているのか、かなり攻め込んでいるつもりでいたのだが、エヴォの方にはステアリングやアクセレレーターの動きで自在にラインを変える余裕がまだ残っていた。これ以上攻めたらズリズリしちゃいそうというところでもうひと粘りする感じ。これが後輪操舵&トルク・ベクタリング&LDVIの効果だろうか。もちろん、そのときに操っている感じも存分に味わえる。スラロームや定常円旋回のときはすっかり牙を抜かれてしまったかのように思えたが、サーキットでそれは要らぬ心配だった。相変わらず水を得た魚のようにイキイキとしている。その時、合点がいった。公道もそつなくこなせるけれど、ウラカン・エヴォの本籍はサーキットにあるのだと。そして新たに加わった機構は640psのエヴォをサーキットでより安全に堪能するためのものなのだと。ランボルギーニは本気で640psの民主化を考えているのかもしれない。
外観はフロント・バンパーやディフューザーの形状が変わった程度。デザイン変更というよりも空力性能の向上が目的かもしれない。
センターコンソールに液晶パネルが配されたのが内装のトピック。機能性のアップもさることながら、SFチックなグラフィックがイケてる。自然吸気の5.2ℓV10はペルフォルマンテ用の640ps仕様にグレードアップ。この変更で乗り味は従来型よりもワイルドな印象が強くなった。
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■ランボルギーニ・ウラカン・エヴォ
駆動方式 ミドシップ縦置きエンジン全輪駆動
文=新井一樹(ENGINE編集部) 写真=ランボルギーニ・ジャパン
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