【7月31日 東方新報】中国サッカー協会はこのほど、「外国籍優秀選手の中国籍取得申請事務実施に関する意見」を打ち出した。3月に「中国サッカー協会国籍取得選手管理暫定規定」が打ち出され、これを補完する形で出された「意見」では、他国の代表経験がないことなどの条件が加えられ、帰化促進対象をW杯出場可能な選手に絞っている。だが、こうした「傭兵(ようへい)部隊」にW杯出場を頼らざるを得ないことに、愛国的サッカーファンの胸はざわついている。

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 サッカー好きの習近平(Xi Jinping)国家主席は「中国の夢」に対比する「個人の夢」として、W杯(World Cup)の中国代表出場と優勝、W杯の中国開催を挙げており、中国では、サッカー強化はもはや国家の威信をかけたプロジェクトの一つ。その最も手っ取り早い方法が優秀な外国人選手の帰化促進というわけだ。

 中国の帰化選手第1号といえば、2019年1月に帰化して北京国安に移籍した李可(Ke Li、アーセナルFCアカデミー)だ。しかし、李の両親は中国人とキプロス人で、もともと中国籍を選択する権利を持っていたことから、このときファンはあまり問題視しなかった。

 だが、上海上港(Shanghai SIPG)のFW、ブラジル人のエウケソン(Elkeson)や山東魯能(Shandong Luneng)のMF、ポルトガル人のペドロ・デルガド(Pedro Delgado)ら「中国人の血」が入っていない「中国人選手」が登場すると、その是非をめぐってネットで炎上した。

「中国サッカーの若手選手育成現場の惨たんたる状況の前で、帰化選手を登用しないで20年以内にW杯に出場する可能性はほとんどないという現実を見るべきだ」という意見がある一方で、「本物の中国人がいない中国代表なら、永遠にW杯に出場しなくていい」という反論もでた。

 国際サッカー界では、当事国の法律と国際サッカー連盟(FIFA)の規定に合致すれば、いわゆる帰化選手の活躍は極めて普通のことだが、中国は伝統的に血縁・血統が国籍以上に重視される価値観があり、「中国人でない中国籍選手」がW杯で戦って勝ってもうれしくないという愛国的サッカーファンも少なくない。

 中国サッカー協会がこのほど打ち出した「意見」によれば、中国の「血統」を持たない外国人選手の国籍取得申請は「満18歳以上26歳以下の選手に限る」という年齢制限を設けた。さらに「外国の代表選手として正式な国際試合に出場したことがない」「原国籍放棄」という条件が加えられた。FIFAの規定では、一度でも他国の代表として国際試合に出場すれば、別の国の代表選手にはなれないからだ。年齢制限は「金に釣られてくる『国際傭兵』ではなく、選手としての黄金期を中国で過ごしてくれる、より若い選手ならば、中国への愛国心、忠誠心がより強かろう」ということらしい。

「ならば、将来的にはアフリカや南米の貧困家庭から子どもを集めて早期から帰化準備を図りながら選手を育成すれば、中国への忠誠と愛国心も備えた強い帰化選手が誕生するのではないか」といった意見も出ている。

 愛国心の有無はさておき、一国のサッカー産業において、代表チームがW杯に出場することは、サッカーアカデミー、リーグ、そして産業チェーン上のあらゆる分野の従業員の末端にいたるまで、巨大でポジティブな刺激を与えることは言うまでもない。まずは、出場することに意義があるというならば、優秀な外国人選手の帰化促進は2022年のカタールW杯に中国代表チームが出場するための応急手段であるとはいえそうだ。(c)東方新報/AFPBB News