【7月9日 AFP】北朝鮮に帰順した72歳の韓国人男性について、男性の知人らが9日、30年以上前に両親が同じく北朝鮮へ移住した後、自身に着せられた汚名や経済的苦境が帰順の動機の一つになったと証言した。

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 韓国元外相の息子であるチェ・イングク(Choe In-guk)氏は6日、北朝鮮の首都平壌に到着。同国メディアは映像で、チェ氏が永住すると報じた。同氏の父親である故崔徳新(チェ・ドクシン、Choe Dok-shin)氏も、1986年に妻と一緒に北朝鮮に帰順。これまで北朝鮮に移住した韓国人の中で、最高位の人物とされる。

 北朝鮮では長年続く抑圧と貧困により、朝鮮戦争(Korean War)以降の数十年間で3万人超が韓国へ逃れた。だがその反対に、韓国から北朝鮮へと向かう事例は極めて珍しい。

 韓国の首都ソウルでAFPの取材に応じたチェ氏の友人は、両親が北朝鮮に移住した後、チェ氏が半生を通じて、安定した職に就くことができず、南北対立が激しい時期にあって「悪名高い」連想を払拭(ふっしょく)することができなかったと語った。

 妻や子どもたちとも疎遠な関係だったチェ氏は、「子どもたちを経済的に支援することができないことを、いつも申し訳なく思っていた」という。

 別の知人が韓国紙の東亜日報(Dong-A Ilbo)に語ったところによると、チェ氏は韓国でできることは「何もない」と述べ、「苦しみの中で」生きていると話していたという。

 チェ氏の父親である崔徳新氏は、朝鮮戦争を戦った退役将校で、1961~79年に強権政治を敷いた朴正熙(パク・チョンヒ、Park Chung-Hee)大統領の下で外相を務めた。

 朴政権との関係が悪化すると、崔氏は1976年に妻の柳美英(リュ・ミヨン、Ryu Mi Yong)氏と共に渡米。その後北朝鮮に移住すると、同国のエリート階級の一員として生活した。

 柳夫人は2000年、ソウルで離散家族再会のために北朝鮮代表団を率いた際、息子のチェ氏と再会。2016年に死去した。(c)AFP/Kang Jin-kyu