【7月12日 東方新報】ごみ分別を徹底する中国・上海市生活ごみ管理条例が1日、正式に施行された。中国で「史上最強」と言われるこの条例は、生活ごみを「生ごみ」(食品など)、「乾いたごみ」(紙類など)、「リサイクルごみ」(瓶や衣類など)、「有害なごみ」(電池など)の主に4種類に分別。ごみを捨てる時間は午前7時から9時まで、午後4時から6時までに限り、条例に違反した個人には最高200元(約3100円)、事業者には最高5万元(約78万円)の罰金が科される。ごみの収集、運送、処理業者などが分別を徹底せず、違反を繰り返した場合は営業許可も取り消す。

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 上海市は条例施行前から、バスや地下鉄でごみ分別意識を高めるビデオを流し、各地域で住民説明会を開き、さらにはごみ捨て場でベストを着たボランティアが分別の方法を指導してきた。また、上海市都市管理行政執行局の職員が市内の1万か所を検査して警告や指導を繰り返し、ごみ捨て場に監視カメラを設置するなど、「硬軟両面」の方法でごみ分別を浸透させてきた。

 中国では、急激な経済発展が続く一方、環境対策が追いつかない側面がある。大気中の微小粒子状物質(PM2.5)が増え、工場から排出される有害物質が川や土壌を汚染するなど、住民の健康をむしばんでいる。政府は、暖房燃料の脱石炭化や自動車の排ガス規制、工場の排出規制強化などに取り組んでおり、ごみ分別もその流れの一環だ。ただ、ごみ分別は企業への指導でなく、市民一人一人の意識改革を求めるだけに多くの労力が必要だ。これまでごみ処理施設や最終処分場などの設置で先頭を走ってきた上海市が、今回もフロントランナーの役目を果たす。

 2017年、中国の202都市で出された生活ごみは2億194万トン。上海市だけで2018年の生活ごみは900万トンを超えた。上海市政府の黄融曾(Huang Rongzeng)副秘書長は「ごみ分別を収集・運搬する基本の枠組みはできた。リサイクルごみの処理量は1日3300トン、生ごみの処理量は6100トンに達する」と胸を張る。2020年には生活ごみの処理能力を1日2万トン、生ごみの資源化は1日7000トンにするのが目標だ。

 ごみ分別が社会のトレンドになった上海市内では、市民の話題はごみ分別ばかりとなった。食事の後のおしゃべりといえば、子育てや子どもの成績の話が定番だが、いまでは「乾いたごみとリサイクルごみの違い」といった話に変わった。通信アプリ・微信(ウィーチャット、WeChat)のグループチャットでも、「使い終わったティッシュはリサイクルごみになるのか?」との書き込みが続く。ごみの分別は今や「全市民が参加するテスト」となっている。

「エコロジー文明の建設」を掲げる習近平(Xi Jinping)国家主席は「ごみ分別を実現することは、民衆の生活環境を改善、資源を節約し、文明の水準を体現するものだ」と強調していて、上海市の取り組みを全国の都市に進めていく考えだ。

 中国では長年、ごみを区別せず、ごみ箱に何でも捨てる生活様式が続いてきただけに、市民から「面倒だ」という不満の声もある。専門家は「世界第2位の経済大国になりながら、このまま何もせずに先進国のような生活を享受することは不可能。意識改革が必要だ」と指摘している。(c)東方新報/AFPBB News