【7月5日 AFP】大規模な植林によって気候変動を緩和できるとする研究結果が4日、米科学誌サイエンス(Science)電子版に発表された。ただし、効果を得るには米国の国土と同じ広さの土地を新たな森林で覆う必要があるという。

 スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH Zurich)の研究によると、米国と同じ面積を木々で覆えば、人間の活動に基づく二酸化炭素排出量の3分の2は吸収され、地球全体の大気中の二酸化炭素濃度を100年近く前の水準まで下げることが可能となる。

 地球上にどれだけ植林が可能か、どこに植林するべきか、植林によって吸収可能な炭素量はどのくらいかを具体的に示した研究は、世界初。

 研究チームは、北極圏のツンドラから赤道直下の熱帯雨林まで、さまざまな森林保護地区の高解像度衛星写真およそ8万枚を分析し、各生態系における森林被覆率の「自然水準」を導き出した。続いて、機械学習を活用して各生態系の森林被覆率を決定する10個の土壌・気候変数を特定。現代の環境条件下で地球上にどれだけの木を植えられるかを割り出す予測モデルを作成した。

 その結果、地球上には植林可能な土地が9億ヘクタールあり、この面積を木々で覆えば二酸化炭素2050億トンを吸収できることが分かった。驚くべきことに、耕作地や都市部にも新たな植林が可能で、気候変動対策においてアグロフォレストリー(森林農業)が重要な役割を果たす可能性も浮き彫りになった。

 ただ、この研究結果に懐疑的な専門家もいる。

 英レディング大学(University of Reading)のマーティン・ルカク(Martin Lukac)教授(生態系化学)は、楽観的すぎるモデルに依存していると指摘。森林面積を大幅に拡大するには、ロシアの人口が減り、欧米諸国が工業型農業の生産性を高め、中国の独裁政権が植林を命じるほかないとして、「いずれも世界規模での実現や継続がおよそ可能ではない」と述べた。(c)AFP/Issam AHMED