【7月12日 AFP】チーム史上初となるラグビーW杯(Rugby World Cup)のプールステージ突破を目指す日本代表「ブレイブ・ブロッサムズ(Brave Blossoms)」のリーチマイケル(Michael Leitch)主将に、恐れるものは何もない。4年前の大会でW杯3勝を挙げた代表とともに、知名度を高めたニュージーランド生まれのフランカーは、日本開催のW杯まで100日を切る中、また新たな歴史をつくれるはずだと今のチームに自信を抱いている。

 リーチは「僕たちの一番の目標はプールステージを突破すること」「プールステージを勝ち上がったら相手はニュージーランドか南アフリカ。だが黙ってやられるつもりはない」とコメントしている。

 15歳で北海道へ移り、30歳となる今では日本ラグビーの顔に成長したリーチ。インタビュー時点では、鼠径(そけい)部のけがからのリハビリ中で、所属する東芝ブレイブルーパス(Toshiba Brave Lupus)の施設でのトレーニング後に話を聞かせてくれた。

 前回大会の日本は、エディー・ジョーンズ(Eddie Jones)前ヘッドコーチ(HC)の下でプールステージ3勝。中でもW杯優勝2回の南アフリカから34-32の金星を飾った試合では、3点差を追う試合終了間際、ペナルティーゴールでの同点を狙わないというリーチの大胆な判断が、カーン・ヘスケス(Karne Hesketh)の会心のトライ、そしてW杯史に残る番狂わせに導いた。

 そのときのことについて、リーチは「あの日はエディーと一緒にコーヒーを飲んで、『お前のやりたいようにやれ!』と言われていた。多分、エディーからもらった中で最高のアドバイスだったと思う」「もし自分が賢い人間だったら、あそこで引退して殿堂入りを狙っていたかもしれない」と話した。

 前回大会の快進撃について、エディー前HCの厳しい練習が土台にあったと考えるリーチは、「当時の僕らはハードワークがどういうものかも知らなかった」「エディーは細部にすごくこだわるタイプだった。ひたすら練習を続けて、練習した通りにプレーしなければいけなかった」と話している。しかしその一方で、ジェイミー・ジョセフ(Jamie Joseph)HC率いる現チームにも当時からの成長を感じているようだ。

「ジェイミーのスタイルでは、プレーに対する選手の責任が以前よりも大きくなった」「今回のチームは、前回よりも自分たちのプレースタイルに強い思い入れを抱いている」

 リーチ自身は、前回大会以上の成績を求める周囲の重圧は感じておらず、ロシア、アイルランド、サモア、スコットランドと対戦するプールAの戦いに向けて「確かに期待は高まっている」「だけどそれをプレッシャーだとは思わない。自分たちならやれるとひそかに思っている」と話している。

 大会の展望については、9月20日に行われるロシアとの開幕戦が最も難しいと予想している。リーチは2018年11月のロシアとの直接対決で、わずか5点差の辛勝だったことを指しながら「一番厳しいゲームになる。メンタル面が問われるはずだ」「向こうは開幕戦に照準を合わせてくる」「彼らが勝利を目指してくれば、その相手は日本となる。僕らはそれに備えなければならない」と話した。

 現在の日本代表は、日本以外にニュージーランドや南アフリカ、太平洋諸島の出身選手が集まる多国籍なチームになっているが、今回もリーチがうまくチームを引っ張ってくれるはずだ。

 ニュージーランド出身の父親とフィジー出身の母親を持つリーチは、自身の経験を生かし、交換留学の一種として、モンゴルの若者を日本へ招いてラグビーをプレーしてもらうことも考えている。自ら「僕はラグビーがすべての人間じゃない」と話すリーチは、東京にカフェも所有している。

 もっともリーチは「だけど今年はちょっと違う。今年は少し自分勝手になって、ラグビーにすべてを懸けている」とも話しており、長い負傷離脱から明けた今は本業のラグビーに飢えている。

 スポットライトを浴びることを好まないリーチは、激しい戦いの中でチームを落ち着かせる存在だ。

「僕のチームの中での役割は、単なるまとめ役。ヒーローになることは望まない」「僕としては、手本を示すことでみんなを引っ張りたい。チームがうまくいっているときは後ろに引っ込んでいて、チームが苦しくなったら前に出て、みんなを守れればと思っている」 (c)AFP/Alastair HIMMER