写真は難民キャンプで、ミャンマーへの強制送還に反対するロヒンギャ難民たちである。この写真を見て感じるのは、子どもたちの悲痛な思いである。ロヒンギャの人々は、ミャンマー国軍によるジェノサイドを初めとした多くの残虐行為を受け、難民となった経緯がある。自分の意思ではなく、自国を離れざるを得ない難民は悲惨であると思う。しかし、そうせざるを得ないほど自国で苛烈な仕打ちを受けているのである。この写真には、その全てが表れているように思う。大人だけでなく子どもたちまで自国に帰りたくないと訴える、世界にはまだまだ想像を絶するような現実があるのだと思い知らされる。私たちが当たり前だと思っている命の保障が、彼らにとっては日々切実に願うものなのだろう。自国に帰ったら死んでしまう、そういう状況に置かれている人々が世界にはたくさんいることを知らなけいけないという思いでこの写真を選定した。


明治大学 福地 俊介 移民セクション

[講評] 羽場久美子(青山学院大学国際政治経済学部教授)
写真から叫び声が聞こえてくるような、ロヒンギャ難民の子供たち。彼らは、難民キャンプからミャンマーへの、帰還の強制送還に叫び声をもって反対している。
祖国から命からがら逃げてくる子供たち若者たちの、祖国での実態を変えることなしに、難民問題を容易に祖国に送り返して解決することはできない。世界は、なぜ難民が数千万人も出てくるのか、なぜ自国に、自分の村に帰れないのか、を子供たちの悲痛な叫びから、学び取り組んでいかねばならない。画面から飛び出してきそうな迫力のある叫びの写真である。またそうした不条理な現実と、命の尊さを深く切り取った選者のキャプションである。
移民セクションでは、もう一つ「祈り」をあげたい。救急隊のボートに乗り込んだ男性が祈っている写真は、様々な数百の思いを、未来に向けて克服していくのだという崇高な姿勢が感じられる。その千々の思いを文字化し我々のやるべきことにも思いをいたした選者の評にも心を打たれた。