【6月18日 AFP】低賃金、長時間労働、深刻なアーティスト不足──かつてないほど世界中で高まる人気に活気づく日本のアニメ業界が今、危機に陥っている。

 フランスで今月15日に閉幕した世界で最も重要なアニメの映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭(Annecy International Animated Film Festival)では、長編映画の最優秀賞候補に日本の3作品がノミネートされた。多くの人手を要するアニメ産業において、米ハリウッド(Hollywood)に真に太刀打ちできる国は日本のみだ。

 しかし、『君の名は。(Your Name.)』の大ヒットや任天堂(Nintendo)の人気ゲームシリーズ「スーパーマリオブラザーズ(Super Mario Bros.)」の映画化計画によって日本のアニメ業界が米ディズニー(Disney)やピクサー(Pixar)の牙城を脅かしそうな状況である一方、業界内にはびこる構造的な問題は日本のアニメ台頭を阻む危険性もはらんでいる。

■燃え尽きる創造性

 タレント不足の心配についていえば、スタジオジブリ(Studio Ghibli)の設立者で日本アニメ界最大のスターでもある宮崎駿(Hayao Miyazaki)氏(78)が引退宣言を撤回し、新作『君たちはどう生きるか(How Do You Live?)』の制作を発表しており、今後の状況次第ではもう1作品手掛けるかもしれないとの臆測も広がっている。

 だが、米アカデミー賞(Academy Awards)にノミネートされたジブリ作品『かぐや姫の物語(The Tale of the Princess Kaguya)』のプロデューサーを務めた西村義明(Yoshiaki Nishimura)氏は、現在日本のアニメ業界はアニメーター不足や劣悪な労働条件に加え、創造性の欠如のような状況にも直面していると語る。

 また、業界内からも低賃金や才能ある若者の不足、しばしば1日12~18時間に及ぶ長時間労働により燃え尽きてしまう制作者たちの境遇を嘆く声が聞こえてくる。

 作品『百日紅(さるすべり、Miss Hokusai)』で4年前のアヌシー国際アニメーション映画祭で審査員賞を獲得し、今年も同映画祭で新作『バースデー・ワンダーランド(The Wonderland)』を発表した新鋭の原恵一(Keiichi Hara)監督は、日本のアニメ業界最大の問題は若いアニメーターがいないことだと指摘している。

 またアヌシー映画祭で作品『海獣の子供(The Children of the Sea)』を発表した渡辺歩(Ayumu Watanabe)監督は、手描きできちんと描けるアニメーターがどんどんいなくなって映像が標準化してしまい、オリジナリティーがなくなってきていると懸念している。