【6月14日 AFP】摩天楼都市としての歴史を持つ米ニューヨークの市当局が、築年数が古くて省エネ効率が悪く、温室効果ガスを大量に排出している超高層ビルに対し、エネルギー消費量を大幅に削減するよう求める法整備に乗り出した。

 省エネの観点から言えば、ニューヨークの古い超高層ビルは最悪の代物だ。建物前面は巨大なガラス張り、至る所に電気照明があり、エアコンは利き過ぎていて、エレベーターは数十基もある。まるで、エネルギーを最大限に消費して温室効果ガスを大量に放出するために設計されたかのような造りになっている。

 世界各地で増えている今どきの超高層ビルが、英ロンドンの超高層ビル「ザ・シャード(The Shard)」や中国の上海タワー(Shanghai Tower)のように最初から省エネ設計されているとすれば、地球温暖化に対する意識が低かった数十年前に建てられたビルの改修にかかる手間とコストを考えると気が遠くなりそうだ。

 だがニューヨーク市議会は今年4月、2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を80%削減する「気候モビライゼーション法(Climate Mobilization Act)」を可決。規制対象はまさに数十年前に建てられた建物だ。

 同法は、2300平方メートル以上の建物のオーナーに対し、2030年までにCO2排出量を2005年レベルから40%削減することを義務化。ニューヨーク市の温室効果ガスの3分の1を排出している約5万棟が対象となる。

 同法はビルのオーナーに長期借入枠を用意しているが、不動産業界は猛反発し、CO2削減のための改修工事に必要な経費は全体で40億ドル(約4300億円)を超えるとの一部の試算に懸念を示している。