【6月15日 Xinhua News】中国の研究者チームがホッキョクグマの毛の中空構造をヒントに、軽量・撥水(はっすい)・断熱性能を持つ中空構造の素材を開発した。今後、航空宇宙分野などの特殊なニーズへの応用が見込まれている。

 ホッキョクグマの毛は、ヒトや他の哺乳類の毛とは異なり、内部が空洞になっている。この中空構造により、皮膚表面の熱が周囲に拡散することを防いでいる。

 中国の研究者チームはこのほど、米化学雑誌「ケム(Chem)」に掲載した論文で、ホッキョクグマの毛の構造をヒントに、中空構造のカーボンチューブ・エアロゲルを人工的に合成したと発表した。同チューブの内径はわずか35ナノメートルで、空気の平均自由行程である75ナノメートルを大きく下回るため、チューブ内の空気が熱をほとんど伝えない。それにより高い撥水・断熱性能が得られた。また、3次元ネットワーク構造による超弾性を持ち、ひずみ30%の条件下で100万回の圧縮を受けても、その構造を完全に維持できるという。

 論文を監修・執筆した中国科学技術大学(University of Science and Technology of China)の兪書宏(Yu Shuhong)教授は、長い進化の過程で中空構造を備えたホッキョクグマの毛は、低温高湿の環境での熱が失われることを低減でき、理想的な人工的合成断熱素材だと話した。研究チームは今後、同素材の量産化を模索し、航空宇宙分野などへの応用を進めていくという。(c)Xinhua News/AFPBB News