【6月4日 AFP】人工知能(AI)はこれまでチェスや囲碁など1対1で対戦するゲームで人間に勝ってきたが、チームワークが求められる複数人が対戦するゲームでも人間を負かすことができたとの研究結果が5月30日、米科学誌サイエンス(Science)で発表された。

 このAIの開発を手掛けたのは米IT大手グーグル(Google)の親会社アルファベット(Alphabet)傘下のAI開発企業ディープマインド(DeepMind)で、AIの「エージェント」らにマルチプレーヤー型ファーストパーソン・シューティングゲーム(FPS、本人の視点で戦うゲーム)を自習させ、人間と対戦させた。

 コンピューターはこれまでにも、1対1の対戦ゲームでは人間を打ち負かしたことがある。例えば、1997年には米IBMが開発したディープ・ブルー(Deep Blue)が、チェスの王者ガルリ・カスパロフ(Gary Kasparov)氏を破った。また、2017年には、グーグルが開発したAIが世界トップレベルの棋士に勝利している。

 だが、複雑な状況下で、チームワークと意思疎通が求められるマルチプレーヤーゲームについては、人間に勝てていなかった。

 マックス・ジェイダーバーグ(Max Jaderberg)氏率いるチームは開発に当たり、「クエイクIIIアリーナ(Quake III Arena)」の修正版を使用した。このゲームは1999年にリリースされたFPSで、現在もeスポーツ界で人気を保っている。

 また、ゲームモードは「キャプチャー・ザ・フラッグ(CTF)」と呼ばれる旗取りゲームを選択した。チームメートと連携し、防御しながら相手チームの旗を奪うもので、プレーヤーは攻撃と防御を組み合わせた複雑な戦略を練る必要がある。

 研究ではエージェントに自己学習させ、人間のプロのゲームテスターと対戦できるまで能力を高めた。

 研究チームによると「12時間練習をした後でも、人間のプロゲームテスターらのエージェントチームに対する勝率は25%にとどまった」。一方エージェントは、反応時間を人為的に低下させ人間の水準に合わせても、人間の能力を上回っていたという。