【5月30日 AFP】(更新)2016年米大統領選へのロシア介入疑惑を捜査したロバート・モラー(Robert Mueller)特別検察官は29日、2年前の捜査開始以来初めて声明を発表し、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領による司法妨害の疑いは捜査では晴れなかったが、現職大統領を訴追する権限が自分にはなかったと述べた。疑惑の解明は、弾劾を求める声が高まっている米連邦議会に引き継がれる。

 モラー氏は、トランプ氏による10件を超える司法妨害疑惑について、「長年にわたる司法省の方針では、在任中の大統領を連邦法に基づく罪で訴追することはできない。これは憲法違反になる」と説明。訴追は「検討できる選択肢ではなかった」と語った。

 一方で、トランプ氏が訴追されなかったことは、同氏の潔白が証明されたことと同義ではないと強調。「大統領が罪を犯していないとはっきり確信できたならば、われわれはそう言っただろう」と述べた。

 さらにモラー氏は、米連邦議会には合衆国憲法に基づき、トランプ氏の司法妨害疑惑をめぐる真相究明を行う権限と義務があると示唆した。

 トランプ氏の不正行為をほのめかすモラー氏の声明を受け、首都ワシントンでは再び波紋が広がっている。

 トランプ氏は、モラー氏の会見が終了した直後、ツイッター(Twitter)に「モラー(捜査)報告書から何も変わっていない。証拠が不十分であり、われわれの国ではこれは無罪となる。この件は解決だ! ありがとう」と書き込んだ。

 一方、野党・民主党内からは弾劾手続きの開始を求める声が改めて上がっている。2020年大統領選の民主党有力候補の一人、エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員は、「モラー氏に疑いの余地はない」「憲法では、行動するかどうかの判断を議会に委ねている。それは、弾劾だ」とツイッターに投稿した。(c)AFP/Paul HANDLEY