【5月25日 MEE】シリア北西部では、ロシアの支援を受けた政府軍が実施する激しい爆撃により、病院の閉鎖が相次いでおり、負傷した民間人らが満足な治療を受けられない状態が続いている。負傷者の家族が語った。

 家族らによると、病院の閉鎖により住民らは遠方にある医療施設の利用を強いられており、こうした施設では日に日に混雑さが増している。シリア北部のある医師は、現場は「悲劇的」状況にあり、医療従事者の負担が増大し、医療品も不足していると述べている。

 国連人道問題調整事務所(OCHA)によれば、先月28日からの3週間で18の医療施設が攻撃を受け、49施設が活動を一部または完全に停止した。OCHAは今月17日の発表で「これらの施設は毎月、17万1000件の外来診療、2760件の大手術、1424件の出産を手掛けていた」と指摘している。

 マスード・カラセさん(31)の子ども2人は14日の空爆で負傷した際、病院をたらいまわしにされたという。「(子どもたちは)すぐに手術が必要だった。何時間もかかったが、ようやくバブアルハワ(Bab al-Hawa)(の病院)にたどり着き、子どもたちに手術を受けさせられた」。カラセさんらは翌日、包帯交換と傷口洗浄のため、車で1時間かけて患者を受け入れ可能な病院を訪れなければならなかった。

 バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)政権の部隊は反体制派武装勢力の掃討作戦を進めており、爆撃はここ数か月で激化。標的の反体制派には、かつて国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)の傘下にあった組織で、現在イドリブ(Idlib)県の大半と、同県に隣接するアレッポ(Aleppo)、ハマ(Hama)、ラタキア(Latakia)各県の一部を支配している「タハリール・アルシャーム機構(HTS)」が含まれる。

 この地域は、シリア情勢の緊張緩和に向けてロシア、イラン、トルコの3か国が昨年9月に合意した協定により大規模な攻勢を免れるはずだったが、HTSが今年、同地域の支配強化に動いたことから、ロシアの支援を受けた政府軍による大規模な対抗措置を受けている。人道支援従事者に対する攻撃も増加しており、食料品や教育、医療を提供する支援団体は活動を停止した。