【5月26日 Xinhua News】今から60年前、日本の作家、井上靖(Yasushi Inoue)氏の歴史小説「敦煌」が発表されると、人々の目は中国西部に注がれた。三十数年前に佐藤純彌(Junya Sato)監督が同作品を映画化すると、敦煌人気は再燃した。ちょうどその頃、日本の栃木県では、この映画に心を震わす少年がいた。少年の名は柳井貴士。柳井さんは遠く離れた中国西部をずっと夢見てきた。

 今年44歳になる柳井さんは、年齢よりもずっと若く見える。早稲田大学で文学博士号を取得した後、2017年に同大学文学部の非常勤講師と国際交流基金の客員研究員になったが、同基金のホームページで中国甘粛省の蘭州大学が日本語教師を募集していることを知ると、迷うことなくそれに応募。すぐに採用された。

 柳井さんは2017年11月に蘭州に向けて出発。十数時間かけて蘭州大学楡中キャンパスのある蘭州市(Lanzhou)楡中県(Yuzhong)夏官営鎮(Xiaguanying)に到着した。

 蘭州に来て1年余りで柳井さんは多くの収穫を得た。専門の沖縄文学では重要な論文を相次ぎ発表し、清華大学や北京語言大学の学術会議では代表スピーチを行った。

 柳井さんは毎日午後、同大学外国語学院の日本語専攻の学生に日本語会話や作文、日本文化に関する授業を行っている。週末には日本語サロンに参加するほか、両国の学生により多くの交流をしてもらうため日本語専攻の学生と日本人留学生との交流会を催すこともある。仕事以外では、学校の近くの焼き肉店でお酒を飲んだり、省内の日本の友人と集まったり、旅行に行ったりしている。柳井さんは敦煌で撮影した写真を手に「本当の敦煌は映画よりも衝撃的だった」と話した。

 柳井さんは帰国のたびに中国での生活を友人らに語り、今ではすっかり中国の「宣伝大使」となっている。「中国は北京や上海だけではない。他にもさまざまな文化や食べ物があり、友好的な人々がいる」と語る。

 2020年には3年間の採用期間が終了する。柳井さんは「ここがとても気に入っている。もう少し長くいられるよう申請するつもりだ。もっと多くの中国の学生を教え、中国語を学びなおし、もっとたくさん旅行に行きたい」と語った。(c)Xinhua News/AFPBB News