【5月22日 AFP】米スポーツ用品大手ナイキ(Nike)は21日、パナマの先住民族クナ(Guna)の団体から同社のスニーカーが民族の伝統的なデザインの権利を侵害していると抗議されたことを受けて、このスニーカーの発売を中止すると発表した。

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 クナ側の弁護士は、ナイキは同社のスニーカー「ナイキエアフォース1(Air Force 1)」の特別モデルに、クナの伝統的な布「モラ(mola)」のデザインを許可なく使用しており、これは知的財産権の侵害に当たるとしている。ナイキは6月6日にこの特別モデルを一足100ドル(約1万1000円)で発売する予定だったが、クナ側は発売中止を要請していた。

 業界専門ウェブサイト「スニーカーニュース(Sneaker News)」が報じたナイキの説明によると、このデザインはプエルトリコ原産のコキーコヤスガエルを図案化したものだという。ナイキはAFPの取材に対し、デザインの表現が不正確だったと謝罪し、このスニーカーは販売しないと明らかにした。

 クナ民族の代表者、ベリサリオ・ロペス(Belisario Lopez)氏は、パナマ市で開いた記者会見で、世界では今回のようなケースが他にも起きており、先住民が保有する数千ものデザインや古代からの知恵が、多国籍企業によって勝手に使われていると指摘した。クナ側の弁護士はAFPに、このスニーカーの発売中止だけでなく、クナ民族の精神性の一部であるデザインをナイキが利用したことに対する賠償を求めていると明らかにした。

 クナ民族はパナマとコロンビアに暮らしており、その大多数がパナマ沖のカリブ海(Caribbean Sea)にあるクナヤラ(Kuna Yala)とも呼ばれるサンブラス諸島(San Blas Islands)で生活している。環境保護団体は海抜の低いサンブラス諸島は温暖化による海水面上昇の影響で危険にさらされていると指摘している。(c)AFP