【5月21日 AFP】母親から早く孫がほしいと言われたことのある人なら、この研究には共感するかもしれない。

 20日の米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に掲載された最新の研究論文では、ボノボ(ピグミーチンパンジー)の母親が自分の息子の性生活において極めて大きな役割を演じることが説明されている。母親は群れの中の社会的地位を利用して息子が魅力的な排卵期の雌に確実に出会えるようにしたり、雄のライバルによる交尾の試みを邪魔したりするという。

 今回の研究では、母親が存命でまだ群れの中にいるボノボの雄は、子をもうける確率が3倍高いことが明らかになった。

 母親が演じる「お助け役」がうまく機能するのは、雌が優位なボノボ社会のおかげだと、論文の執筆者らは考えている。チンパンジーは雄が優位でより凶暴であるのとは対照的に、ボノボは利他的で温和な性質を持つことが以前から知られている。

 論文の共同執筆者で、独マックス・プランク進化人類学研究所(Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology)の霊長類学者のマルティン・シュルベック(Martin Surbeck)氏は「非常に重要な雄の適応度特性、すなわち繁殖に対して母親の存在が及ぼす影響を明らかにしたのは、今回の研究が初めてだ」と話す。

「研究チームにとって驚きだったのは、ボノボの母親が自分が得る孫の数に対してこれほど強力で直接的な影響を与えることだ」

 今回の研究のために、シュルベック氏と研究チームは、コンゴ民主共和国に生息する野生のボノボ個体群と、コートジボワール、タンザニア、ウガンダに生息するチンパンジーの野生個体群をそれぞれ観察した。

 研究チームは今回、父子関係を確認するためにDNA分析用のふんサンプルを採取している。