【4月4日 AFP】ドイツ南部バイエルン(Bavaria)州は3日、有機農業を推進し農薬や肥料から自然環境を保護する法律を制定すると発表した。同州では「ハチを守ろう」と訴えて法律制定に必要な住民投票の実施を求める請願書への署名が、2か月で175万人分に達していた。

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 マルクス・ゼーダー(Markus Soeder)州首相は、請願に基づいて住民投票を実施するのではなく、「請願書の文言を一字一句変えずに」そのまま法制化すると説明。環境対策では取り残されがちな農業界も、変容の達成を支援しなければならなくなるだろうと述べた。

 州の法案では、有機農業の基準を満たす農地を2025年までに農地全体の20%まで増やし、2030年までに30%にする。また、州内の緑地の10%は花畑とし、川や水路を農薬や肥料の汚染から保護する対策も強化する。

 動植物の保護の強化を呼び掛けるバイエルン州の署名運動は、2月の立ち上げからこれまでに175万人の賛同を集め、同州史上最も成功した請願となっていた。

 従来の農業を根本から変えることになる画期的な決定の背景には、昆虫の絶滅を警告する研究結果の存在がある。それによると、世界に生息する全昆虫種の半数近くは急速な減少傾向にあり、約3分の1は地球上から姿を消す恐れがあるという。

 ドイツをはじめ世界中の研究者らは昆虫の激減について、種の多様性とバイオマス全体の観点から、昆虫を餌とする動物と受粉の媒介者として昆虫を必要とする植物に深刻な結果をもたらすと警鐘を鳴らしている。近年見られる減少傾向は、過去5億年間で6度目となる種の「大量絶滅」の一部だと指摘する専門家もいる。

 2016年の研究によれば、約14億人分の雇用と全農作物の4分の3がハチなどの「送粉者」(植物の花粉を媒介する生物)に依存しており、無償で授粉するこうした生物の経済的価値は数千億ドルに上るという。(c)AFP