【2月28日 Xinhua News】東京懐石・檜垣(ひがき)は、中国重慶市の大繁華街、解放碑商業圏にある。創業者、経営者、料理長、おかみの全てが日本人の日本料理店は重慶でも同店だけだ。

 檜垣卓央(ひがきたくお)さんは2005年、32歳の時に中国に来た。そしてパートナーと共に東部沿海地域の上海市や福建省などで10軒近い日本料理店をオープンさせた。

 檜垣さんは2018年5月、西部地区に目を向け、重慶に店をオーブンする構想を持った。しかし、パートナーから猛反対を受けてしまう。 

 「重慶市の住民は購買力が低く、また辛くてしびれる味をとりわけ好むこともあり、淡泊さを特長とする日本料理が市場を得るのは難しいだろうと彼らは考えたのです」と檜垣さんは振り返る。

 「中国には『百聞は一見にしかず』という言葉があるではないか」。檜垣さんは2人のパートナーと実際に重慶を視察に訪れ、3000万人の人口を擁するこの大都市がとてもにぎやかであり、街も清潔で、夜景はまるで絵巻のような美しさであることに気付いた。

 さらに大きかったのは、客単価約500元(1元=約16円)の日本料理店がすでに重慶で5店舗を構えており、どの店舗もピーク時には客が並んでいるのを発見したことだ。これが、檜垣さんの重慶進出への自信を一層確固たるものにした。

 昨年8月、東京懐石・檜垣は重慶で正式にオープンした。しかし、開業当初2カ月の営業状況は惨憺(さんたん)たるもので、何日も続けて客が入らないことさえあった。

 それが今では、美食家の間で大人気になっている。客単価は1000元前後とエリートビジネス層が中心だ。檜垣さんは、中国での日本料理の将来は非常に明るいと考えている。海産物や新鮮な野菜を主な食材とし、種類も豊富で、淡泊で油っこくない日本料理は、ますます中国の消費者から好評を博している。

 その背景には、中日交流が日増しに緊密化していることがある。日本へ観光に訪れる中国人(香港・マカオ・台湾地区を除く)は6年前、200万人近くだったが、2018年には800万人を上回り、訪日外国人観光客の約3分の1を占めている。

 檜垣さんは「日本で本場の美食を味わった人は、帰国後も日本と同じようにおいしい料理が食べられないか探すはず」と語る。上海には6000店以上の日本料理店があるが、重慶にはわずか200店近く、高級店は5店にすぎないと指摘し、重慶のような中西部の大都市は他にも多数あることから、中国の日本料理は前途洋々と語る。檜垣さんは現在、重慶で日本式焼き肉店の出店を計画しており、日本食文化をさらに広めていきたいと考えている。

 東京懐石・檜垣のオーナー 檜垣卓央さん

 15年ほど、こういう長い時間中国にいると、時々「中国が好きですか」と聞かれることがあるんですが。当たり前です。嫌いな場所に10年以上いるってすごく難しいですよね。15年間、本当に楽しく中国では過ごさせてもらってます。さらに、経営者になって、今4年になりますか。この間も本当にいろんな中国の方からの助けもあって、この会社どんどん大きくなりつつあります。その中で、僕が今できること、一つは僕を育ててくれた、後はこういう機会を与えてくれた中国にちょっと感謝をしたいなと。どんなふうな形で感謝できるかってなった時には、日本の文化を中国に伝えていく。食、特に食ですね。やはり皆さん食べ物には興味がありますから、その日本の食、和食を紹介していって、その中で文化も紹介していって、日本と中国の距離が少しでも縮まるといいなと。特に市民レベルでの心の交流と言いますか。こういうところに、僕個人もしくはこの会社が協力できればいいなとは思ってます。(c)Xinhua News/AFPBB News