【2月22日 AFP】大型肉食恐竜ティラノサウルス・レックス(T・レックス、Tyrannosaurus rex)の近縁種にあたる小型恐竜の化石を米国で発見したとの研究結果が21日、英科学誌コミュニケーションズ・バイオロジー(Communications Biology)に発表された。最上位捕食者のT・レックスがどのような進化を遂げて食物連鎖の頂点に上り詰めたかを理解する上でカギとなる「ミッシングリンク(失われた環)」を埋める可能性のある発見だという。

「破滅の前兆」を意味する「モロス・イントレピドゥス(Moros intrepidus)」と名付けられた小型恐竜は、地面から腰までの高さがわずか1メートルで、体重は人間の成人ほどしかない。約9600万年前、現在の米ユタ州にあたる平原地帯に生息していた。これまで北米大陸でT・レックスの仲間と判別された恐竜の中では、最古の部類に入る。

 化石を発見した研究チームはこの新種恐竜が、より有名な近縁種のT・レックスがどのようにして巨大な体格を獲得したかに関する手がかりになると考えている。

 論文の主執筆者で、米ノースカロライナ州立大学(North Carolina State University)の古生物学者のリンゼイ・ザノ(Lindsay Zanno)氏は「ティラノサウルスは進化の初期段階で、当時、食物連鎖の頂点の地位をすでに確立していたアロサウルスなど(の恐竜)の影に脅かされながら狩りを行っていた」と話す。

■短期間で大きさと優位性を獲得か

 T・レックスは約8000万年前の白亜紀までに、今日よく知られている姿の象徴的な巨大捕食恐竜にまで進化した。モロス・イントレピドゥスの発見は、およそ1500万年という比較的短期間のうちに、これほど大きな体格と優位性を獲得したことを示している。

「ダンスパーティーの壁の花から主役の座まで、ティラノサウルスがいつ、どのくらいの速さで上り詰めたかについて、古生物学者らは長年頭を悩ませてきた」とザノ氏は説明。モロスは、この謎を解くカギとなるという。

 ザノ氏と研究チームが発見した標本は体重が80キロ足らずのため、極めて敏しょうだったと考えられる。「モロスは電光石火のように動きが素早く、より小さな獲物を捕食していた可能性が高いことがわかっている」「最初期の白亜紀のティラノサウルスは体が小さかったが、その捕食性の特殊化は、温暖化、海面上昇、生息域の縮小などによって生態系が再構築された際の新たなチャンスを生かすための用意ができていたことを意味していた」と、ザノ氏は述べている。 (c)AFP/Patrick GALEY