【2月22日 AFP】生物多様性が失われることで世界の食料生産が危機にさらされると警告する初の報告書を、国連食糧農業機関(FAO)が22日、発表した。

 FAOは「私たちのフードシステム(食料の生産から流通・消費までの流れ)を支えている生物多様性が、世界各地であらゆるレベルで減退しているという証拠が山のように」あると指摘。これにより、食料生産と環境が「重大な脅威にさらされている」「ひとたび失われれば、フードシステムに不可欠な動物や微生物を取り戻すことはできない」と警告している。

 農業の生産体系において生物多様性は、病害や害虫の流行、気候変動といったショックへの耐性を高める役割を担っている。報告書は病害や害虫のため食料生産量が激減した例として、1840年代にアイルランドを襲ったジャガイモ飢饉(ききん)や、1990年代にサモアを見舞ったタロイモの不作を挙げた。

 FAOによると、生物多様性が失われつつある要因には、土地や水の利用・管理の変化、環境汚染、過剰収穫などがある。

 地理的に見ると、中南米やカリブ諸国は豊かな生物多様性を誇る一方、甲殻類や魚類、昆虫類など食用の野生種の多くが絶滅の危機にある。

 持続可能な森林管理や、生態系アプローチに基づく漁業と有機農業など、生物多様性に配慮した取り組みを導入している国もあるものの、まだやらねばならないことは多いとFAOは述べ、各国政府や国際社会にさらなる尽力を呼び掛けた。

 国連(UN)の統計によれば、世界では既に推計8億2100万人が慢性的な飢餓に陥っているが、2050年までに世界人口は現在の77億人から100億人近くまで増えるとみられ、世界の食料供給体系を維持することが極めて重要となっている。(c)AFP