【2月19日 AFP】シリアでイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」の壊滅に向けた作戦が大詰めを迎える中、ISの拘束下から救出されたフランス人女性2人がシリア国内の避難民キャンプでAFPの取材に応じた。2人は、母国で公正な目で見てもらえるのなら帰国してもいいと語った。

 シリア北東部のクルド人実効支配地域にあるアルホル(Al-Hol)避難民キャンプでインタビューに答えてくれた2人は、目以外の全身を黒い衣装で覆い、1人は子ども3人を連れていた。取材はクルド人兵士の立ち合いの下で行われた。

 この避難民キャンプには、過去数か月間に米軍が支援するクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」に救出され、収容された外国人女性がおよそ500人いる。女性たちは周辺の村々でISに拘束されていた。

 2人は取材の冒頭、フランスにいる家族に害が及ばないよう、個人情報は一切明かさないと断った。

 2人のうち、より積極的に話してくれたのは、リヨン出身という29歳の女性だ。「私たちは動物じゃなく人間です。心もあるし、魂もあるんです」と青い瞳で記者をまっすぐ見つめ、避難所から出たいと訴えた。

 SDFはISの残党勢力をシリア東部バグズ(Baghouz)のわずか0.5平方キロほどの区画に追い詰め、ISに降伏するしかないと呼び掛けている。

■「ISに脅されていた」

 フランス政府は、ISに属していた可能性のある女性や、その子どもたちの送還に二の足を踏んでいる。

 フランスでは2015年以降、ISが犯行を主張する攻撃が相次ぎ、多くの犠牲者が出ている。このため、こうした女性たちの帰還は慎重さを要する問題であり、ISが弱体化してからも行動を共にしていた男女については、さらに懐疑的な目が向けられる。

 もう1人の30代だという女性は、夫と3人の子どもたちと共に今月初めにIS最後の拠点から脱出したと明かした。かすかにフランス南部のなまりがある女性は、IS戦闘員たちと意見は合わなかったが何も言えなかったと語った。リヨン出身の女性も、IS戦闘員に脅され、喉を切り裂くとかレイプするなどと言われたと証言した。

 米軍の支援を受けたSDFがIS最後の拠点に進軍し、爆撃や食糧不足に見舞われる日々が数週間続いた頃、女性は密航業者に50ドル(約5500円)を支払って、息子らと共にIS拠点から脱出した。

 女性たちは2人とも、帰国する用意はできていると語った。だが、リヨン出身の女性は、信仰するイスラム教の慣習を続けられることと、子どもたちと密接な関係を維持できることを、帰国の条件に挙げた。女性は数年前に爆撃で2歳と6歳の子どもを失っている。だが、報復は考えていないと断言した。「私の子どもたちは殺された。だからといって誰かを殺すということはありません」