【2月18日 AFP】「水をくれ!」。乾ききったシリアの平原に叫び声が響く。野外で夜を明かし、喉がからからになった避難民たちがトラックに駆け寄ると、荷台に積まれた数十本の水はわずか数秒のうちになくなってしまった。

 砂漠の低木地帯で寝泊まりしている女性や子どもたちは、少なくとも300人に上る。大半はイラク人で、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が最後の抵抗を続けているシリア東部の村バグズ(Baghouz)から脱出して来た。

 幸運な何人かだけはテントを手に入れたが、ほとんどの人は米軍主導の有志連合が支援するクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」が配給した安っぽい毛布の上で寝ている。SDFはわずかながらの水やいくらかの食料も配給している。人道支援団体はここにはいない。

 イラクの首都バグダッド出身のファティマさんは、4人の子どもを連れてバグズを脱出した。子どもたちは全員まだ15歳に満たない。「外で寝るのは二晩目だ。バグズは爆撃が激しく、たとえ外であっても、ここで寝る方が安全だ」とAFPに語った。

 住むところを失った家族たちは、SDFによる手続き後に、車で6時間ほど北へ走ったところにあるアルホル(Al-Hol)避難民キャンプまで、トラックで移送されるのを待っている。

 辺り一帯のひび割れた地面には、空のボトルや汚れたおむつが散乱している。

 頭にスカーフを巻いた10代の少女が、SDFのトラックから米とピーマンが入ったプラスチック製の容器を素早くつかみ取った同じ年頃の少年に近づいて行った。「分けてもらえる?」と、少女は恐る恐る尋ねた。少年は手で食べ物をかき込みながら、向こうへ行けというように手を振る。少女の痩せこけた顔は、静かにすすり泣きながらゆがんだ。