【2月18日 Xinhua News】ロシア西北部のノバヤゼムリャ列島の静かな生活がこのほど、一群の「招かれざる客」の到来によって一変してしまった。同島南端の集落ベルーシャグバでは先日、一度に50頭以上の空腹のホッキョクグマが食べ物を探し求め、雪と氷に覆われた町をうろつき回った。住民によると、このような事態はこの20年で初めてだという。

 集落に入り込んだホッキョクグマはわが物顔で歩き回り、人間の動きもさまざまな騒音も全く気にかけない。監視カメラには、一部の好奇心の強いホッキョクグマが集合住宅の廊下内まで侵入して餌を探す様子が映っていた。

 ホッキョクグマの侵入は、地域住民の生活に大きな影響を及ぼしている。住民の多くは外出を避け、両親は子どもを一人で学校に通わせることができず、一部の職場では従業員の出退社のため、集合住宅入り口まで送迎の車を出している状態だ。

 このため、同島を管轄するアルハンゲリスク州政府は9日、現地に非常事態宣言を発令した。しかしホッキョクグマはロシアで保護動物に指定されているため、連邦天然資源利用監督局は住民の身に重大な危険が差し迫っていない限りはホッキョクグマを射殺せず、麻酔を打ってから移送するなどの措置によって、これらの「招かれざる客」を駆逐するよう配慮を求めた。

 現在、地元政府はトラックやクローラートラクターを使ってクマを追い払っているほか、パトロール隊も組織しており、集落をうろつくホッキョクグマは大幅に減少した。だが、空腹のホッキョクグマが再び「侵入」するのではと住民の不安は消えない。

 科学者によると、生息地を離れて餌を探しに来るホッキョクグマの異常行動は、異常気象が引き起こした北極海の海氷の減少と、住民の家庭ゴミの不適切な処理に関係があるという。

 世界自然保護基金(WWF)ロシア支部の責任者であるイゴール・チェスチン氏は、ホッキョクグマは、砕けた海氷の上でアザラシを捕獲する習性があり、海氷が消えて水中での狩りができなくなったホッキョクグマは陸に上がって餌を探すしかなくなると指摘。家庭ゴミ処理システムの整備が不十分な集落で、長期にわたってむき出しのまま堆積された生ゴミが、空腹のホッキョクグマにとって抗しがたい誘惑になってしまっていると語った。

 専門家は、クマ被害発生の危険を根絶するにはホッキョクグマの餌に関する問題を解決するしかないと指摘した。(c)Xinhua News/AFPBB News