【2月20日 AFP】授業は終わったが、アフリカ西部ベナンの田舎では、11歳のアンブロワーズさんが木陰にある駐車場に大急ぎで向かう。今日の学びはまだ終わっていない。

 コーラの木の真下に止めてあるのは、コンピューターを積んだトレーラーだ。この国ではコンピューターのような技術を見たことも、触れたこともない生徒ばかりだ。

 ベナン最大の都市コトヌー(Cotonou)を拠点にする非営利団体「ブロラブ(BloLab)」が考案した長さ13メートルのトレーラーは、太陽電池パネル12枚で動き、十分な数のノートパソコンを搭載している。田舎の生徒たちに、ほとんどの家庭が買う余裕のないコンピューターに慣れ親しむ機会を与えている。

 48人の児童がいるクラスで、これまでコンピューターに触ったことがあるのは4人のみ。アンブロワーズさんはコピー店で使い、他の3人はコンピューターを持つ兄弟姉妹がいた。

■大海の一滴

 ブロラブの創設者であるメダール・アグバヤゾン(Medard Agbayazon)さんによると、ベナンでは情報格差は概念ではなく、現実だという。

 アグバヤゾンさんはAFPの取材で「都市では多くの人が技術に触れ、ネットカフェがあるが、田舎ではコンピューターやスマートフォンを見ることはめったにない」と説明した。

 当局が昨年発表した報告書によると、ベナンのインターネット普及率はわずか42.2%。うち、ほぼ全員(96%)がインターネット通信の際に携帯電話を使っていた。

 このようなベナンの状況下で、移動教室のアイデアが生まれた。教室には、扇風機も設置されている。

 ブロラブは、スイスのチャリティー団体「アフリカン・パズル(African Puzzle)」から寄付されたトレーラーをけん引するタクシーの使用料を支払っている。

 昨年8月から2か所のコミュニティーを訪れた移動教室は、1か所につき1か月間滞在し、毎週5回の2時間レッスンを無料で提供した。

 59の村に小学校88校が散らばる、人口12万8000人のアブランク(Avrankou)にとって、移動教室は大海の一滴のようなものだ。

 アグバヤゾンさんは「このアイデアはコンピューター科学者を育てるためではなく、子どもたちにデジタル技術を使いたいと思わせることにある。デジタル技術は日常生活で起こる問題を解決するための道具だ」と話した。

■ジェリカンの新たな利用法

 あるグループがトレーラーに備えられたコンピューターで文章ソフトを使っている間、他は町役場の片隅で、使われなくなった機械や、コトヌーの企業とチャリティー団体から寄付された部品を使って、ジェリカンの中にコンピューターを組み立てる方法を学ぶ。

 生徒たちは前回の授業からすでに「マザーボード」「ハードドライブ」「電力供給」のような言葉に慣れ親しんでいる。

 講師2人のうち1人が、簡易的なコンピューターを25リットルの黄色いプラスチック容器(ジェリカン)に組み立てるために使う部品を子どもたちに見せる。

 こうした自家製の機械を作動するには、モニターに接続されている必要がある。

 講師は「この授業は子どもたちにコンピューターの内部に慣れ親しんでもらい、神秘性を取り除き、たとえ十分な資金がなくても、自分たちで作ることができると見せることにある」と話した。

 移動教室の決まりの一つは、使うソフトウエアはすべて無料で公開されているものでなければならないということだ。

 アグバヤゾンさんは、「私たちはライセンスを買う資金を持っていない。子どもたちにハッキングするよう仕向けたくない」と話した。(c)AFP/Delphine BOUSQUET