■「性的に興奮させる道具」

 イラン政府は、女性にヒジャブや質素な服装を義務付けるといったイスラム法における男女の違いは、女性を守る目的があると主張する。

 最高指導者アリ・ハメネイ(Ali Khamenei)師は2018年、セクハラ告発運動「#MeToo(私も)」は、欧米社会がいかに女性をないがしろにしているかを示す証拠だとツイートした。「欧米において女性は消費主義を象徴しており、化粧をして見せびらかし、男性の性的興奮を高める道具となっている」

 だが、イランの服装規定は近年、徐々にではあるが、大きく変わりつつある。

 通りを巡回し、女性のスカーフを直し、いきなりカフェに入って交際中のカップルがいないか確認していた風紀警察は、今ではめったに見かけない。

■徐々に前進

 当局は、ヒジャブ着用に積極的に抗議する人々に対する取り締まりはやめていない。昨年には、ヒジャブ着用に抗議した複数の女性が逮捕され、その弁護を引き受けた著名な人権派弁護士ナスリーン・ソトゥーデ(Nasrin Sotoudeh)氏は懲役刑を科された。

 だが、革命直後から女性たちは徐々に多くのものを取り戻してきた。

「以前とは全く違う。前は男友達に車に乗せてもらうこともできなかった」と、テヘラン在住の女性ジャーナリストは話す。

 市民の人権改善を公約に掲げ、2017年に再選を果たした「穏健派」のハッサン・ロウハニ(Hassan Rouhani)大統領が、女性閣僚を一人も指名しなかったことに失望した人も多い。

 テヘランの政治ジャーナリスト、フェレシュテ・サデギ(Fereshteh Sadeghi)氏は、「ガラスの天井が今もあるが、今後もなくならないだろう」と指摘する。「ロウハニ師は大統領に就任した際、アヤトラ(イスラム教シーア派の有力宗教指導者)と不仲になることを恐れ、譲歩した」と続けた。

「女性たちは少しずつ権利を手に入れつつある。だが、今のところ女性運動は起こっていない」 (c)AFP/Amir Havasi and Eric Randolph