【2月10日 時事通信社】8年前の東京電力福島第1原発事故を受けて脱原発を決めたドイツは今、原発に完全に別れを告げるのに避けて通れない、高レベル放射性廃棄物最終処分場の立地選定という難題に直面している。半永久的に廃棄物を地下に抱えることを強いるだけに、過去には住民の激しい反対運動で計画が白紙に戻った苦い経験もある。政府は失敗を教訓に「徹底的な住民参加」を掲げ、10年超を見越して選定作業を再始動させた。

 ◇ゴアレーベンの失敗

 「透明性は確保されているのか」。1月中旬、自治体への選定過程説明会で南部の小都市ウルムを訪れた放射性廃棄物処分安全庁(BfE)のケーニヒ長官に、環境団体メンバーが詰め寄った。ケーニヒ氏は「ゴアレーベンの事態はもう起こさない」と繰り返した。

 北部ニーダーザクセン州ゴアレーベンは、処分場選びの困難さの象徴だ。同地の岩塩層は地層処分での廃棄物封じ込めに適切と判断され、西独時代の1970年代に調査が始まった。しかし選定基準が不明瞭で、東独との国境に近いため選ばれたとの不信感も広がり、住民は数十年にわたり激しい反対闘争を展開。政府は2013年に計画の撤回に追い込まれた。ケーニヒ氏は「密室での決定で、押しつけと受け取られた」と語る。

 ◇白紙から絞り込み

 このため、17年には関連法を改正。「地表から300メートル超隔たっている」など詳細基準をすべて公開し、(1)2020年に複数の一次候補発表(2)一次候補地を地上探査(3)地下探査を経て31年に決定-とする計画だ。根拠となったデータなどはすべて公表する。BfEは、この過程を「白紙の地図」から候補を絞り込む公平な作業だと強調。ケーニヒ氏がウルムなど全国各地を行脚しているのも、この過程の説明のためだ。

 プロセス監視のため、環境団体や学識経験者のほか、学生も名を連ねる「国家同伴委員会」を設置。このほか、自治体や住民からなる複数の委員会も、議論に参加する。同伴委メンバーで、脱原発を決定付けた委員会にも参加したミュンヘン工科大学のシュラーズ教授は「ゴアレーベンでは住民が決定過程から外され、長期の抗議につながった」と指摘。「最初から住民が参加すれば、支持を得ることができる」と話す。

 ◇地元に拒否権なし

 ただ、最終的に立地の提案をするのは政府側で、承認は上下両院。自治体や各委員会に拒否権はない。最後には「押しつけ」ざるを得ず、地元との衝突が避けられる保証はない。南部バイエルン州の連立政権は昨年の連立協定で「(同州は)最終処分場には適さない」と早々に宣言した。

 シュラーズ氏は「『白紙の地図』は全土が候補になり得るということ。これは危険な先例となってしまう」と警告する。

 失敗が繰り返されないかは、「ここまで議論を経た結果なら仕方ない」と国民が納得できる過程を、今後10年超で踏めるかにかかる。原発に区切りを付ける作業は始まったばかりだ。(c)時事通信社