【2月10日 AFP】韓国の首都ソウルで9日、火力発電所での作業中に事故死した下請け作業員キム・ヨンギュン(Kim Yong-kyun)さん(当時24)の追悼デモが行われ、約2500人が参加した。

 キムさんは昨年12月、ソウルの西南約110キロにある泰安火力発電所で1人で勤務していた時に誤って石炭搬送用のベルトコンベヤーに挟まれ、死亡した。労働運動関係者らは、事故当時に他にも作業員がいれば、コンベヤーを止めてキムさんを助けることができたと主張。泰安発電所では2010年以降、キムさんを含めて下請け労働者9人が労働災害で死亡している。

 韓国ではキムさんの死を機に、経済規模でアジア4位でありながら下請け労働者や派遣労働者の業務上の安全をないがしろにしているとの批判が巻き起こった。韓国の非正規労働者は、約60%が健康保険など雇用保険の対象外となっている。

 キムさんの母親キム・ミスク(Kim Mi-sook)さんは、政府が非正規労働者の法的保護措置を導入するまでキムさんの葬儀は行わないと言明。政府が発電所などの非正規労働者約2200人を正社員化する案を提示したため、ようやく9日にキムさんの葬儀が営まれた。

 葬儀には「私はキム・ヨンギュン」と書かれた鉢巻きを締めた非正規労働者の若者たちが大勢参列。非政府組織(NGO)「韓国進歩連帯(KAPM)」のパク・ソクウン(Park Seok-woon)会長が、「何よりも命が大切にされる世界に、あなたが生まれ変わることを願っている」と弔辞を述べ、父親のキム・ヘギ(Kim Hae-gi)さんはひつぎにすがって涙を流した。

 政府は昨年末にも、キムさんの死後に行われた抗議デモを受けて産業安全保健法を改正し、水銀の使用など危険を伴う業務を下請けに出すことを禁止している。

■高い非正規率と労災死

 韓国は先進国の中でも、業務中の事故による死亡率がかなり高い国の一つだ。雇用労働省の統計によると、2017年には労災事故で1957人が死亡している。

 野党・自由韓国党のイム・イジャ(Lim Lee-ja)議員がまとめた報告書によれば、2014年から18年に国内5つの主要発電所で事故死した20人全員が下請け労働者だった。

 韓国労働研究院(Korea Labor Institute)の調査によると、17年時点で15~24歳の51%がアルバイトや非正規労働者として働いていた。

 キムさんも大学卒業後、半年以上も正社員職を探していたが見つからず、泰安火力発電所の下請け作業員となっていた。(c) AFP