【2月10日 AFP】米民主党のエリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren)上院議員(69、マサチューセッツ州選出)が9日、2020年米大統領選挙への立候補を正式に表明した。米国人労働者を守ると声高に訴える一方、先住民の祖先がいるとの主張をめぐって物議を醸しており、選挙戦に悪影響が及ぶ恐れもある。

 ウォーレン氏はマサチューセッツ州ローレンス(Lawrence)で歓声を上げる支持者らを前に演説し、「これは私たちの生活のための闘いだ」と述べ、「富める者や権力者、他人のことを顧みない者を支える不正に仕組まれたシステム」に反対すると訴えた。さらに、「やっとのことで生きている家族が何百万もいる」「これはおかしい」と威勢の良い演説で一般大衆に向けて積極的にアピールし、左派的な主張を全面的に押し出した。

 民主党からは、昨年の大みそかに出馬の意向を表明していたウォーレン氏のほか、ドナルド・トランプ(Donald Trump)大統領と争う次期大統領選への出馬表明が相次いでいる。候補者の顔ぶれは、性別、年齢、人種的背景で民主党史上最も多様で、これまで以上に進歩的となっている。10日に正式に出馬表明するとみられているエーミー・クロブシャー(Amy Klobuchar)上院議員ら複数の有名女性議員も含まれている。

 ウォーレン氏が出馬表明を行ったローレンスは、かつて毛織物工業で栄えた町。1912年には、大勢の移民を含む女性労働者グループが、地域全体に広がることになるストライキを決行。賃上げと労働環境の改善を勝ち取り、女性と労働者にとっての歴史的勝利を収めた場所だ。

 用務員の娘として生まれたウォーレン氏は、一学期の学費が50ドルのコミュニティーカレッジに通い、最終的にはハーバード大学(Harvard University)で法律を教えるまでになった。中産階級の権利を政治理念の中心に据え、擁護してきたウォーレン氏は、自身が貧しい生い立ちから現在の地位に就いたことに言及し、「アメリカンドリーム」の復活に一役買うことができると訴えた。

 しかし、自分には先住民の祖先がいるというウォーレン氏の主張をめぐる根強い議論が、ウォーレン氏の選挙戦にどの程度の悪影響を与えるのかは不透明だ。トランプ大統領はウォーレン氏を「ポカホンタス(Pocahontas、先住民女性の名前)」と呼んで、やゆした。

 これを受けてウォーレン氏は昨年10月、事態の沈静化を図りDNA検査を受けて結果を公表した。しかし、先住民の血がごくわずかしか流れていないことが判明し、裏目に出た。最終的に、先住民の共同体「チェロキー・ネイション(Cherokee Nation)」に謝罪することになった。

 米紙ワシントン・ポスト(Washington Post)は先週、ウォーレン議員が1986年のテキサス州の弁護士登録の文書に自身の人種を「米先住民」と記載していたとする記事を掲載し、問題が再燃している。(c)AFP/Gianrigo MARLETTA, with Elodie CUZIN in Washington