【2月7日 AFP】イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」が樹立を夢見た「カリフ制国家」が崩れ始め、シリア東部から何千もの人が逃げ出している。その中には、ISの最も残忍な行為を生き延びた人たちもいる。

「決して忘れない」と、40歳のイラク人女性ビッサさんは静かに言う。ビッサさんは少数派のヤジディー(Yazidi)教徒で、これまで6人のIS戦闘員に「売買」された。「彼らが望んだことは何でもやった。嫌だとは言えなかった」

 ビッサさんは、何年もISの「性奴隷」として過ごし、1月末にようやく解放されたヤジディー教徒の女性や少女7人の一人だ。中には13歳の時に拉致された10代の少女も含まれていた。

 AFPは、米国が支援する部隊の管轄区域でこの女性たちを取材したが、彼らは一様に家に帰りたいと口にした。

 ここ数週間で、壊滅状態のイラクとの国境付近のIS支配地域から3万6000人以上が逃げ出しており、この中には3200人のIS戦闘員も含まれている。

 現在、米国が支援するクルド人主体の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」が掌握するこの地で、ヤジディー教徒女性の話ほど痛ましいものは他におそらくないだろう。

 ISは2014年、シリアとイラク一帯に勢力を拡大したが、この中に大規模なヤジディー教徒共同体が存在するイラク北部シンジャル(Sinjar)も含まれていた。ヤジディー教徒はクルド語を話し、その信仰はゾロアスター教にルーツを持つが、ISは彼らを「背教者」とみなしている。

 ISはシンジャルで、男性たちを殺し、少年たちを無理やり戦闘員にし、6000人以上の女性を拉致した。