30戦10勝11敗9分けという成績は、決して際立ったものではないが、リッピは中国サッカーに戦績以外の大きな財産を十分に与えていた。

 中国サッカーファンにとって近年の中国サッカーは、批判と悲観的な感情の対象でしかなかった。そしてこのような環境下にある選手たちには、プレッシャーは並大抵ではなく、ピッチ上で充分に実力を発揮することも難しかっただろう。

 このイタリア人監督は、自身のやり方でチームを常に鼓舞し続けた。潜在的にリッピの影響を受けた中国チームの心理状態に大きな変化が見られ、それ以後のチームは、多くの状況で従来の、それ以上のパフォーマンスを発揮できるようになった。これはひとえにリッピの人心掌握術なしには成し得られなかっただろう。

■「選手に対し、いかなる感謝の気持ちもない」

 あるサッカーファンがリッピ監督を空港まで見送るという話に、リッピ本人は「必要ないよ」と応じたという。

 829日の任期を終え、2000万ユーロ(約25億円)の年俸をもらっていたとされるリッピ。そんなリッピが最後に残した言葉は、「選手に対し、いかなる感謝の気持ちもない」

 老将が寂しく中国から去っていく。リッピを持ってしても中国サッカーを大きく変えることはできなかったが、少なくともリッピは多くの人たちに希望を見せてくれた。結果として、その希望を裏切る形にもなったが、中国サッカーの未来はまだ長い道のりが続く。(c)CNS/JCM/AFPBB News