【2月5日 AFP】古代エジプトの王(ファラオ)、ツタンカーメン(Tutankhamun)の墓の保存作業を約10年に及んで行ってきた国際チームが1月31日、その成果を公開した。

 ナイル川の東岸、ルクソール(Luxor)の「王家の谷(Valley of the Kings)」にある少年王ツタンカーメンの墓は、1922年に英考古学者ハワード・カーター(Howard Carter)氏が発見。以来、あまりにも有名になったことが災いし、長年にわたって大勢の観光客が訪れてきた悪影響が出ていた。

「3000年も封印されていた後、100年間、観光客にさらされた墓への影響を想像できますか?」と、プロジェクトを率いた米ロサンゼルスのゲティ保存研究所(Getty Conservation Institute)のネビル・アグニュー(Neville Agnew)氏は言う。

 ツタンカーメンの墓を救うため、2009年に考古学者や建築家、技術者、微生物学者ら25人によるチームが発足。保存作業はまず、ほこりに覆われていた黄金色の壁画を含む玄室の徹底調査から始まった。壁画に付いていた正体不明の「茶色い斑点」を分析するため、チームは高性能顕微鏡を持ち込んだ。

 科学者らは、斑点の正体はカビではないかと懸念していた。だが慎重に分析した結果、斑点は微生物由来のものではあったが、原因となった微生物自体は、はるか昔に死滅していたことが判明した。

 しかし問題が一つ残った──深く浸透したこの斑点を除去できない。だが、「私たちが行ったのは、修復ではなく、保存作業だ」とアグニュー氏。茶色い斑点は、カーター氏の発掘以降にできたものではないと述べ、「斑点も(ツタンカーメンにまつわる)物語の一部だ」と語った。

 一方、建築家チームは繊細な壁画に観光客が近づきすぎないよう足場を設計し直し、技術者チームは二酸化炭素(CO2)や湿気、ほこりなどの悪影響を抑えるために新たな換気システムを開発した。