【1月30日 AFP】米連邦議会の超党派議員が29日、組織ぐるみの国際的な薬物違反を犯罪として取り締まる「ロドチェンコフ反ドーピング法(Rodchenkov Anti-Doping Act)」と呼ばれる法案を提出した。

 これは1週間前、世界反ドーピング機関(WADA)がデータ提出期限を守らなかったロシアへの追加処分を見送ったことを受けたもの。法案は米国の選手に対する不正行為が見過ごされないよう、最大100万ドル(約1億1000万円)の罰金や禁錮10年の刑罰を科すことを目指すものとなっていて、党派をまたいだ異例の支持を得ている。

 シェルドン・ホワイトハウス(Sheldon Whitehouse)上院議員は「今こそ、ロシアのいかさまに対する厳しい罰を制定し、ロシアをはじめとする国家主導の不正行為に及ぶ者たちに対して、腐敗を外交の駒として使うことは許さないというメッセージを送るべきだ」とコメントした。

 ロシアの薬物違反をめぐっては、2011年から2015年にかけて30以上のスポーツの1000人を超える選手がドーピングに手を染めていたという、国家ぐるみの不正がリチャード・マクラーレン(Richard McLaren)氏の報告書によって明らかになった。ロシアはその後、当時のデータの提出期限を守らなかったが、WADAはそのことに対する処分は科さないという判断を下していた。

 ホワイトハウス議員は、「ロシアの腐った政府の非行には、力で対抗しなければならないということがよく分かった」「そうでなければ彼らはつけあがる。WADAと国際オリンピック委員会(IOC)によるロシアのドーピングスキャンダルへの対応がひどく不十分なものに終わったのは、それが理由だ」と述べている。

 データは最終的にWADAの元へ渡ったが、米国反ドーピング機関(USADA)のトラビス・タイガート(Travis Tygart)最高経営責任者(CEO)はWADAを批判し、「選手には厳しい罰を科す一方で、国家が五輪で不正を行い、選手と公衆に大規模な詐欺をはたらきながらのうのうとしていられる、そんなグローバルシステムは変える必要がある」と話している。

 グリゴリー・ロドチェンコフ(Grigory Rodchenkov)氏は、ロシアの研究所の元所長で、米国へ逃れてロシアの不正を告発した人物。そのロドチェンコフ氏の弁護士も「WADAにもIOCにも、ドーピング違反を阻む力はまったくない」ことを理由に、法制化の必要性を訴えていた。(c)AFP