【1月24日 AFP】ハキリアリは互いにコミュニケーションを一切取り合うことなく、食物や資材を数百メートルにわたって運ぶための道づくりをしているとの研究結果が23日、発表された。一部の昆虫社会がどのような方法で組織的に活動しているのか、研究者らに再考を促す成果だという。

 ハキリアリの各コロニーは毎年、森林の地表面から全長約3キロ近くに及ぶ道を切り開くが、道の構築と維持のために平均で1万1000時間もの時間が費やされると考えられている。

 中南米を原産とするハキリアリは、互いにコミュニケーションを取り合い、異物を除去したり葉を切り取ったりする作業に専門のアリを割り当てることで、巨大なプロジェクトを組織しているとこれまで長年考えられていた。

 だが、国際研究チームは今回、自然界で最も素晴らしい技術を持つ動物の一種であるハキリアリの行動を調査している際に驚くべき発見をした。大規模な「インフラ構築プロジェクト」を進めるにあたり、全体計画の一部として個々の作業課題を伝えるどころか、そうした調整を一切行っている様子が見られなかったのだ。

 つまり、アリはおのおのが単独行動をとり、遭遇する障害物を取り除くなど、環境中の問題をそれぞれが解決していたということになる。

 米ノースウエスタン大学(Northwestern University)電気工学・情報科学部のトーマス・ボシィネク(Thomas Bochynek)氏は「何千何万という個体がインフラの構築に寄与するが、個体間のコミュニケーションや組織化は一切行われない。道は、そうした行動によって形成される副産物」と話し、「これは驚くべきことだ。なぜなら、多くの集団行動はコミュニケーションによって組織化されるからだ」と、AFPの取材に語った。

 アリ、ハナバチ、シロアリなどの社会性昆虫の行動をつかさどるのは通常「スティグマジー(個体間の直接的または間接的なコミュニケーションを通じた自己組織化)」だと考えられている。例えばアリは、コロニーの他の仲間に対する一連の指示として各個体が残していくフェロモンを介して建築プロジェクトを組織すると長年考えられていた。だが、この説については、複数の研究によって否定的な見解が示されている。