【1月23日 AFP】北極圏に位置する島、デンマーク領グリーンランド(Greenland)では、海面上昇の原因となる氷の融解が進行しており、氷が消失するペースが2003~13年の10年間で4倍に加速したと警告する研究論文が22日、発表された。氷の融解は氷河だけでなく、島全体で顕著に進行しているという。

 デンマーク工科大学(DTU)宇宙研究所は声明で、「2003年には年間111立方キロの氷が消失したが、10年後にはこの数字がほぼ4倍の428立方キロとなった」と述べている。

 同研究所の研究者らが参加したグリーンランドの氷床の変化に関する今回の研究は、米科学アカデミー紀要(PNAS)で発表された。

 DTUのシュファカト・アッバス・カーン(Shfaqat Abbas Khan)教授は「これは、氷の融解パターンにおいて現在確認されている顕著で驚くべき変化だ」としている。

 これまで、グリーンランドの氷の融解の大半は氷冠地帯、主に島の北西部と南東部にある氷河で観察されていた。だが、2003~13年の氷消失の大半は、大きな氷河がほとんど存在しないグリーンランドの南西地域で発生していた。

 PNASに掲載された論文の筆頭執筆者で、米オハイオ州立大学(Ohio State University)のマイケル・ベビス(Michael Bevis)教授は、現在は氷が表面質量から融解しており、「海岸線から離れた内陸部で融解している」とみられると指摘している。

 これは、グリーンランド南西部でますます大量の融解水が海に流れ込んでいることを意味する。

「これまでも、大型の溢流(いつりゅう)氷河によって氷流出率が増加しているという大きな問題が存在することは知られていた」と、ベビス教授は説明する。「だが、今回の研究により、ますます大量の氷塊が融解し、川となって海に流入し、消え去ろうとしているという二つ目の深刻な問題が認識された」

 これがさらなる海面上昇を引き起こし、重大な影響をもたらすと考えられると、べビス教授は警告する。

「われわれは、氷床が臨界点に達するのを目の当たりにしている」ベビス教授は述べた。これにより、巨大な氷塊全体が、数百年あるいは数千年という単位で融解へと追いやられることが考えられるという。

 厚さが最大で3キロに及ぶグリーンランドの氷床には、世界の海面を約6メートル上昇させるのに十分な量の凍結水が含まれている。

 今回の研究で観察された氷の融解は、陸地温度の上昇に起因している。また、温度が上昇を続ける海水と氷が接触することが原因で発生している部分もある。

 カーン教授は、「大気の温度が徐々に上昇すると、すぐに氷の融解が加速していることが分かる」と話した。

 世界の海面は20世紀中に平均で20センチ上昇したが、上昇幅には地域差がみられる。現在は年間約3.3ミリのペースで上昇している。(c)AFP