【1月23日 AFP】ロシアでスパイ行為をしたとして逮捕・起訴された元米海兵隊員のポール・ウィラン(Paul Whelan)被告(48)について、モスクワ市裁判所(Moscow City Court)は22日、弁護側の保釈申請を退ける決定を下した。

 ウィラン被告は昨年12月28日、ロシア連邦保安局(FSB)に拘束された。FSBは、「スパイ行為の最中」にウィラン被告を拘束したと発表している。

 青いシャツと黒いズボンを着たウィラン被告は、ロシアの慣例に従い、法廷に設置されたガラスのおりに入って審理に臨んだ。22日の審理のほとんどは報道陣と領事館関係者には非公開で行われた。

 審理後にウィラン被告の弁護士ウラジーミル・ジェレベンコフ(Vladimir Zherebenkov)氏は、保釈を認めなかった裁判所の決定に不服を申し立てる方針だと述べ、ウィラン被告は国家機密入りのUSBドライブを受け取ったが、内容が国家機密とは知らず、ロシア文化に関する情報だと思っていたと明らかにした。ウィラン被告にUSBを手渡した人物については言及しなかった。

 アナリストの間では、ウィラン被告は外国で逮捕されたロシア工作員と交換するために逮捕されたのではないかとの見方もある。

 ウィラン被告の拘束は、銃を持つ権利擁護の活動家でロシア人のマリア・ブティナ(Maria Butina)被告(29)が米国で逮捕されたことへの報復だと考える向きもある。ブティナ被告は、米国の外交政策に影響を与える目的で米共和党との関係構築を図り、違法な外国工作員として活動したとして起訴され、昨年12月に罪を認めて有罪判決を受けた。量刑は禁錮6月になるとみられている。

 ロシア政府は、外交ゲームで人をチェスの駒のように使うことはしないとして、ウィラン被告と米国で逮捕されたロシア人を交換することはないとしている。ジェレベンコフ氏は、公判が始まれば少なくとも半年は続き、公判中に交換の交渉はないだろうとの見方を示した。(c)AFP/Anna MALPAS