【1月24日 AFP】ベトナムでは旧正月「テト(Tet)」の連休を前に、かぐわしい香りを放つ線香作りが大詰めを迎えている。同国の「線香村」では、多くの住民が竹の皮を削って染めて、乾燥させる作業に追われている。

 ハノイ郊外のクアンフーカウ(Quang Phu Cau)村で家内工業に従事する労働者にとって、旧正月は1年で最も忙しい時期。100年以上もの間、多くの家庭が誇りを持って線香作りを続けている。

 ダン・ティ・ホア(Dang Thi Hoa)さんはAFPの取材に対して、「旧正月のための線香を作ることは昔から続く伝統で、精神的な仕事」と話す。足元には午後の日に当てて乾燥させている鮮やかなピンク色に輝く線香の束が並ぶ。ホアさんの家族は100年以上前から線香作りを始め、彼女の母親はいまだに、放課後に線香作りを手伝うホアさんの10代の娘と一緒に働いている。

 線香が完成したら、ホアさんはベトナム中心部で販売し、旧正月に向けて多い時で月430ドル(約4万7000円)を稼ぐ。同国の平均月収195ドル(約2万1000円)に比べて相当な額だ。線香作りはクアンフーカウ村の多くの住民にとって「誇り」であるだけでなく、近辺の工場で働くより高い収入を得ることができる仕事でもある。

「この仕事(線香作り)は大変だけれど、2人の子どもを医者に育て上げるのに十分な稼ぎになる」。レ・ティ・リウ(Le Thi Lieu)さんは線香を地面に広げて乾燥させながら語った。(c)AFP