■合意なしの離脱

 英国がEUと合意できないまま離脱するのは、英国の景気後退を招き、EUの経済成長も著しく鈍化させかねない最悪のシナリオと考えられている。だが英議会が協定案を拒み続け、離脱予定日の3月29日までに他の解決策が見つからなかった場合、これが既定路線ということになる。

 メイ首相の協定案では、世界5位の経済大国である英国とその最大の輸出市場であるEUとの貿易ルールは、2020年末までの移行期間中ほぼ完全に維持される。

 しかしルールが突然変われば、ほぼすべての経済分野に影響が及び、英国内で日用品の価格高騰や、港湾など物流拠点の混乱を引き起こす恐れがある。

■2回目の国民投票

 英国のEU離脱の是非を問う2016年の国民投票で、離脱派52%、残留派48%で離脱派が勝利して以来、残留派は国民投票のやり直しを求めてきた。ここ数か月、その声は一段と大きくなっている。

 再度の国民投票を禁じる法律は英国にないものの、それが民主主義にのっとった手続きなのか疑問視する人も多い。

 さらに言えば、単に対立が一段と深まるだけの結果になる恐れもある。複数の世論調査では、英国民はこの問題をめぐっていまだ二分されていることが示されている。

 メイ首相は、再投票をすれば「われわれの政治の一貫性が修復できないほど損なわれてしまう」と警告している。

 まずすべきなのは離脱日の延期だろうが、EUの外交官らは、できてもせいぜい数か月だとくぎを刺している。(c)AFP/James PHEBY