【1月14日 AFP】始まりは2016年、米ニューヨークに設置された1基のブロンズ像だった。巨大なタコが市内とスタテンアイランド(Staten Island)を結ぶフェリーを転覆させ、400人近くが犠牲になったという1963年11月の悲劇を追悼して建てられたものだった。

 翌2017年、今度は市内のバッテリー・パーク(Battery Park)に別の像が設置された。1929年10月にサーカス興行師P・T・バーナム(P.T. Barnum)氏のゾウ数頭がブルックリン橋(Brooklyn Bridge)を渡る途中でパニックに陥り、暴走した際に圧死したウォール街(Wall Street)の銀行家たちに捧げた記念碑だった。

 そして数か月前、ニューヨークの水辺を散歩していた人たちが、新たな像を発見。1977年7月に宇宙人によって誘拐されたタグボートの乗組員6人に捧げられたものだった。

 これら3基の像を制作したのは、彫刻家のジョセフ・レジネッラ(Joseph Reginella)さん(47)。実はこの3つの悲劇は、彼のたくましい想像力から生まれた作り話だ。冗談好きの彼は、現実には存在しない犠牲者を追悼する記念像をアートとして作り上げてきた。

 レジネッラさんの作業は、まず架空の大惨事が起きた日付を慎重に選ぶことから始まる。その際、実際に悲劇があった日と同じ日付を選ぶ。

 巨大タコによってフェリーが「沈没」したという1963年11月22日は、ジョン・F・ケネディ(John F. Kennedy)大統領が暗殺された日。

 また、ゾウの暴走事件が発生したという1929年10月29日にはウォール街大暴落が起き、タグボートの乗組員が「失踪」した1977年7月13日の夜はニューヨーク市が大規模な停電に見舞われた。

 実際に起きた出来事の衝撃が非常に大きかった場合、人々はレジネッラさんが作り上げたような他の悲劇を見落としたと思うのではないかというのが、彼のアイデアの源泉だ。

 米国では誰もがグーグル(Google)を使って情報を調べたり確認したりしている昨今、レジネッラさんは自分のジョークの信ぴょう性を高めるため、偽の新聞記事やドキュメンタリー映像といった資料を一緒に制作してインターネット上で公開している。(c)AFP/Catherine TRIOMPHE