【1月11日 AFP】これまで、SFの世界の中に限られていた自動翻訳機だが、人工知能(AI)やクラウドコンピューティングの進歩により、実用レベルに到達し始めている。最新の機器では、ほぼリアルタイムでの対応も可能になった。

 米ネバダ州ラスベガス(Las Vegas)で開催中の世界最大級の家電見本市「国際コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(International Consumer Electronics ShowCES)」では今回、携帯タイプの専用端末やワイヤレスイヤホン型の多言語翻訳機が数多く展示されている。

 米ニューヨークで2014年に設立されたウェイブリーラボ(Waverly Lab)は、イヤホン型翻訳機「パイロット(Pilot)」を展示している。パイロットは15言語に対応しており、価格は180~250ドル(約1万9500~2万7000円)。

 パイロットを装着することで、異なる言語同士でも会話が可能になる。会場で行われたデモでは、フランス語を話すAFP記者と英語を話すウェイブリーラボの最高経営責任者(CEO)のアンドリュー・オチョア(Andrew Ochoa)氏が会話をしてみせた。翻訳は、オチョア氏のスマートフォンを通じてクラウド上で行われ、専用アプリで会話の文字起こしも可能だ。

 オチョア氏によると、翻訳はオンライン上のデータセンターで行われ、その翻訳結果がイヤホンに音声として送られる仕組みになっている。そのため、数秒のタイムラグが生じるのだという。

 多言語対応の同時翻訳機は、「スター・トレック(Star Trek)」のような世界にのみ存在するものだった。だが近年、モバイル端末、機械学習、ワイヤレス環境の能力とスピードの向上により、こうしたデバイスが現実のものとなり始めている。また、ニューラルネットワークの導入で、AIは初出の言葉も理解できるようになり、システムに辞書を丸ごと記憶させる必要も無くなった。

 オチョア氏は、昨年の販売から1年もたたないうちに約3万5000組のパイロットが売れたと話す。中には、顧客との会話で多岐にわたる言語での対応が求められるホテルなどのサービス業で取り入れているところもあるという。