■「ミゼラブルはお呼びでない」

 一方で、高級ホテル「エスピナス・パレス・ホテル(Espinas Palace Hotel)」が会場となっている豪華なミュージカルには、批判の声も上がっている。

 チケットは50万~185万リアル(約1300~4800円)と、大半のイラン人には手が届かない価格に設定されている。イランの日刊紙ジャバン(Javan)は、「ミゼラブル(みすぼらしい)な人はお呼びでないようだ」と批判している。

 ミュージカル「レ・ミゼラブル」は一見、イランのタブーを破っているかに見える。だが、パルサイー氏は、文化・イスラム指導省の舞台芸術部門の責任者を務めたこともあり、越えてはならない一線がどこかということをよく理解している。

「上演許可を得る前に、審査委員会が通しで見ている」「検閲当局は、この『レ・ミゼラブル』が完全に法律や規制に沿っていると認めている。タブーは冒していない」

 パルサイー氏は10年前、英ロンドンでチャールズ・ディケンズ(Charles Dickens)の小説「オリバー・ツイスト(Oliver Twist)」を基にしたミュージカルを見て以来、ミュージカルのとりこになった。昨年はテヘランでその「オリバー」のミュージカル公演を実現させている。現在、同氏はプロダクションを設立し、新しい世代のミュージカル演出家の育成に力を入れている。(c)AFP/ Kay Armin Serjoie