【1月19日 AFP】イランの舞台演出家ホセイン・パルサイー(Hossein Parsaee)氏は、仏小説家ヴィクトル・ユーゴー(Victor Hugo)の「レ・ミゼラブル(Les Miserables)」は「国境を超えた名作」だと絶賛する。パルサイー氏が演出を手掛けた画期的なミュージカル版「レ・ミゼラブル」が今、イランの首都テヘランで人気を呼んでいる。

 パルサイー氏の演出には、厳格なイスラム教国イランならではの配慮が随所にされている。

 まず、女性の出演者は地毛を見せてはならないので、全員かつらを着用している。かつらがあまりにも自然に見えた場合に備え、ミュージカルの宣伝ポスターにはわざわざ目立つように赤い字で、女性の髪はかつらであることが強調されている。

 また、男優と女優は手を触れるなど身体的な接触は一切ない。さらに女性がソロで歌うことはタブーとされているため、女性が歌う時は常に2人以上で歌う。

 ここはやはりイスラム共和国イランの首都なのだと思わせる演出だが、大型ミュージカルに欠かせない他の要素──オーケストラの生演奏、ドライアイスを使った派手な演出、まばゆい照明などは全てそろっており、従来のイランのイメージを覆してもくれる。

 出演者、スタッフ、オーケストラは総勢450人。2018年11月の上演開始以来、定員2500人の会場で週6夜公演が行われているが、常に満席だという。観客は主に裕福な若者で、イランでは珍しいミュージカルを見る機会に喜びを隠せない様子だ。

 イランでは「レ・ミゼラブル」は書籍の翻訳版が出版されている他、他国で制作されたテレビ番組、映画、アニメも頻繁に放映されている。

 さらに、最高指導者アリ・ハメネイ(Ali Khamenei)師のお墨付きももらっている。ハメネイ師は「レ・ミゼラブル」のことを「奇跡の小説…思いやりと愛にあふれた本」と表現している。